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星に語りて~Starry Sky~のKUBOのレビュー・感想・評価

星に語りて~Starry Sky~(2019年製作の映画)
3.8
今日は宮古島「よしもと南の島パニパニシネマ」で、松本動監督作品『星に語りて〜Starry Sky〜』を、俳優の今谷フトシさんの舞台挨拶付き上映にて鑑賞。

過去『FUKUSHIMA 50』や『太陽の蓋』など、「3.11」を扱った作品は数々あったが、本作はまた違った視点から震災を描く。

「障害者が消えた」

震災後のこのショッキングな言葉から始まる本作は、いわゆる避難所に集まった人たちの中に、本来その地域に住んでいたはずの障害者の姿がないという不可解な事実からスタートする。

身体障害者、視覚障害者、聴覚障害者…、様々な障害者が避難所の生活に対応できず、放射能汚染の残る被災した家に戻って生活していたのだ。

この実態を解明しようと全国障害者ネットワークの人々が立ち上がるが、その調査の壁となるのがなんと個人情報保護法。全障ネットのメンバーは全ての障害者の安全を確認するために、この行政の壁に立ち向かっていく!

フィクションとしながらも、本作は実際の障害者の方たちや、彼らに接してきた支援者の方たちから取材した事実に基づいて作られているドキュメンタリーに近い作品。

舞台挨拶に立たれた今谷フトシさんは実際に震災でお母様を亡くされ、本作の出演に覚悟を持って挑まれたそうだが、福島パートで今谷さん演じる「森川」の演技には経験が持つリアルを感じざるを得ない。まさに熱演である。

本作の監督を務めた松本動監督は「多くの方に見てもらいたい作品」ではなく「見なきゃいけない作品」だ、と自ら本作の重さを語る。

松本動監督はこの後、新作『在りのままで進め』の公開を控えているが、こちらの作品にも今谷フトシさんが主演されている。この新作も傑作なので要注目です。

「3.11」と言えば、どうしても津波、原発、政治と大きな枠組みで捉えがちだが、その裏で忘れられかけていた障害者の人たちを救うべく戦った人たちがいたことを、本作を見て初めて知り、感動した。

今谷さんの「まず知ってもらうこと」「本作を見てそのことを知ってもらえれば、この映画を作った意味がある」という言葉に大きく頷いた。

映画はエンターテイメントではあるが、私たちに多くのこと、大事なことを教えてくれる。
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