Jeffrey

ある闘いの記述のJeffreyのレビュー・感想・評価

ある闘いの記述(1960年製作の映画)
3.0
「ある戦いの記述」に言及する。

本作は1961年ベルリン国際映画祭ドキュメンタリー部門で金熊賞を受賞したクリス・マイケルの57分のドキュメンタリー映画で、この度DVDを購入して初鑑賞した。第二次世界大戦が終結し、3年後の1948年に建国した初のユダヤ人国家イスラエル。それから12年目を迎えたイスラエルを約1カ月間旅行した監督の目に映ったその複雑な現実を描いている作風で、キブツで集団生活を送る人々を始め、聖書に書かれた動物だけを集めた聖書動物園などが捉えられる。

どうやらこの作品はマイケル自身が本作の上映を禁じていたらしいのだが、彼の死から5年後の2017年にフランスで復元版の上映が実現したとの事である。

余談だが、キブツとはヘブライ語で集合または集団を意味するらしい。イスラエルの独自な共同組合の事であるらしいのだが、生産的自力労働、集団責任、身分平等、機械平均と言う4大原則に基づき共同生活を送る。これらは本作を見ていると分かってくる。1960年代には社会主義的理想の地としてユダヤ人のみならず多くの人々がイスラエルに移住した歴史もある。

本作の冒頭はモノクロのスチール写真数枚を重なって写し出していて、それは監督自身の傑作の1本である「ラ・ジュテ」を彷仏とさせるオープニングシーンである。そしてカラーに変わり、語り部による説明が入って映像が進み始める。渇いた地をロングショックで捉え、ここはイスラエルと言う説明が入り人口200万人がまもなく300万人になろうとしていると言う様々な説明が入り、当時の人々の姿をとらえる。

ラクダや湖、街の風景、工事用のトラクターなど様々な映像が映される中、市場の色彩豊かな果物から食べ物などのショットが印象的に残る。活気に溢れるその市場の活力や、人々を捉えた眼差しが魅力的である。それに劇中で整備された道路を手作りのスポーツカーみたいなカートを改造した乗り物みたいなので道路を滑っていく少年のシークエンスは非常に面白い。それにイスラエルの兵士みたいな人が人々に何かを訴えかけているシーンや大量の小動物が街に溢れかえったり、所々モノクロで静止画が挟まれたりとかもする。

やはりモノクロの映像は緊迫感がある。特に有刺鉄線が映る場面などは記憶に残る。
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