おれさま

アザーズのおれさまのレビュー・感想・評価

アザーズ(2001年製作の映画)
3.7
"This house is ours..."

終始暗い映像から、不安を助長する雰囲気、
そしてラストに至るストーリー。
王道ゴシックホラーの名作。

音楽から映像、小道具や人物像…
陽の差し込む情景、霧の立ちこむ木々、
揺らぐ火、重厚なカーテン、
知覚・感覚に入る情報たちの全てがクラシカルで様式美に満ちている。

構想・脚本、作曲を監督自らが行っているという拘りが細部まで。原題も、『アザーズ』と世界観を一言で表せる程に的確。

主演、ニコール・キッドマン。
もうこれで観る理由。
『Dogville』で心を鷲掴まれました。
洋館にいるキッドマン、
立ち居振る舞いが見事なキッドマン、
冷酷な表情のキッドマン、
おそらくキッドマンよりもキッドマンに合うキッドマンは居ない。

結末やストーリーは語る必要もないでしょう。
皆さんの目で。腑に落ちます。
複数回目の視聴でも、存分に楽しめました。

死生観の抱きかたは人それぞれ。
どこまでが本当かはわからないヴィクトリア朝時代に流行したポストモーテム・フォト。ご遺体を生前の様に写し、死に意味を持たせる作品が映画内にも現れましたが、死の身近な表現としてアクセントが効いていて、とても好き。死後の姿を写すこと自体、おそらく今では不謹慎。作品の時代背景を考えた場合、貴重な媒体でもあり、死の捉え方が美とする部分もあったのでしょうか。中流階級の娯楽として変化していったのは、やはりイギリスという階級社会の特徴かなと。
ポストモーテム・フォト、気になりますよね。偏奇な趣ですね。

原点回帰に近いゴシック式ホラーのお手本として、そしてニコール・キッドマンを、是非。
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