たかちゃん

線上のフェア・プレイ/フェアプレーのたかちゃんのレビュー・感想・評価

3.8
チェコスロバキアの女子陸上選手が、ロス五輪出場有力候補として、コーチからストロンバという筋肉増強剤を射たれる。しかし体調に悪影響を及ぼすので、射つのを止める。ところが国の圧力に負け、母親は薬を偽り、ストロンバを娘に射つ。不正を拒否した娘は、薬物なしで五輪出場を手にするが、国家ぐるみのステロイド服用疑惑から、チェコスロバキアは五輪出場を辞退する。
ヒロインの家庭は、父親が西側に亡命しており、母親は諜報機関から西側の情報を入手するよう脅されている。母親は反体制派の文書をタイプしているが、諜報機関に文書を発見される。また、娘も恋人がオーストリアに亡命、母娘とも絶望の淵に立たされる。
本作は1983年の社会主義国家だったチェコスロバキアでは個人、家庭の幸福は蹂躙されていたことを描いているが、母親の苦悩や娘アンナの潔癖さは表面的でしかなく、コーチが国家の命令で行動していることは描いていない。国の陰謀も家族の苦悩も中途半端で物足りないのだ。これでは増村保造の『セックスチェック・第二の性』(68)のスプリンターのジェンダー問題の切り込み方に遠く及ばないではないか。
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