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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのtntnのレビュー・感想・評価

4.7
ドイツ映画祭に惹かれて観に行った。期待してたけどそれよりも良かった。というかしんどい。
ラジ・リ版『レ・ミゼラブル』のラストの先を描きながらも、同じ結論に戻ってしまったかのような。
ベニーが生きることのできる場所はどこなのだろうか。
彼女に病名をつけて鎮痛剤ぶち込んで施設で隔離することが正解かどうかは疑わしいとわかるが、かと言って自然やアフリカみたいな非日常に連れて行って遊ばせるのも結局は手を変え品を変え彼女を学校や施設といった「システム」に包摂するに過ぎないと気付いてからは、通学の付き添い人の彼の姿がしんどい。
脚本は非常に単純で、序盤で「ベニーが母親と共に生きる」ことが目的として提示される。しかしそこにたどり着くのがいかに困難か。
中盤でその願いが叶う可能性がほぼなくなる場面。ここで思わず施設の人が泣き崩れてしまうのだが、このシーンが辛いのは、単に母がベニーから離れてしまうことではなくて、「家族」という共同体を維持することの困難さが伝わってくるから。
ベニーとミヒャが序盤で交わす視線のやり取りが、クライマックスで遂に途切れてしまう瞬間の映画的感動。凄かった。傑作。
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