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シノニムズのTenKasSのレビュー・感想・評価

シノニムズ(2019年製作の映画)
4.0
シュールさ(異常さと言っていいかも)と緻密さが同居した映画で、監督の凄まじい知性を感じる。画面で起きていること自体はナンダコレ?というような感触が多いのだが、ときおり膝を打つように解った気になる瞬間があり、何をやらんとしているか少しずつ見えてきて面白かった。謎解き的な面白さとは違うが、何度か観れるともっとディテールが見えてきそう。

自分vs世界の戦いには融和という選択肢はなく、基本的には弾かれるか取り込まれるか。アイデンティティ、言語、国籍、国境、生まれ、搾取のシステム等々、様々な壁の存在に結局阻まれて、ドア一枚に拒絶されるやるせなさ。
何かを投げ打って違うものを手に入れようとしても結局もともと持っているものへの寄り掛かりや他者への寄り掛かりなしには生きられない曖昧さ。多かれ少なかれ普遍的なことではある。

とりあえずずっと気になっている「シオンズフィクション」を買おうと何となく思った。
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