負けん気の強さが愛らしいコーニー、ピーウィー、バケットの男三兄弟。パパの後妻に選んだのは踊り子であるアン・シェリダン。不埒な女だと思われた彼女は家庭的で一途。木樵には見えるが牧師には全然見えないヘイドン。サーク特有の両義性のある人物たち!という程でもないのは、メロドラマの屈折した感情とは異なり、コメディにおいて心理は行為や発話で明らかになっているからだろう。劇中劇『Take Me to Town』を取り仕切るシェリダンにサークの演劇人としての矜持を重ねてしまう。終盤になると悪役は高い場所に逃げたがるものだ。『ハイ・シエラ』然り。すると頭上にカメラが置かれてヘイドンと逃亡犯の殴り合いが行われる。落下のサスペンスよりも、平衡感覚を失った平面的な画面構成に度肝を抜かれる。このカメラの視線こそdeus ex machinaそのもの!