磯野マグロ

王国(あるいはその家について)の磯野マグロのレビュー・感想・評価

3.9
繰り返しながら、だんだんある方向に演技が仕上がっていくというつくりではなく、さまざまな方向性をもった演技が、めちゃくちゃな順番で、何度も繰り返される。もちろん観ている方は混乱する。わたしは途中までは劇中劇ではなく、(この映画内世界で)実際に起きた事件をシンプルに再構成した、一種の再現ドラマかもしれない、と思って見ていた(もしかしたらほんとにそうなのかもしれない)。
そしてタチが悪いことに、ラストにおこるかなり悲劇的な出来事は、この映画では一番最初に提示されているので、観客は勢い、なんでそんなことが起きたのかをさまざまな演技の中から推測し続けることになる。まるで「地獄の人力マルチバース巡り」。
基本「本読み」ばかりなので動きはなく、絵はずっと単調だが、かなりスリリングで楽しい(さすがにマッキー10回はすこし飽きた)。
最後の最後に、やっと通しで脚本を読む。セリフだけしか読まないのでト書きがわからなず、話の流れは見えるような見えないような。セリフのないシーンは無言のまま、つまり3人が無言で座ってるシーンが延々と続く。なんちゅう映画じゃ。この部分のシナリオブックは売られているので、興味のある方はぜひ買って読みましょう。理解深まります。
ときおり挟まれる、舞台となる茨城県龍ヶ崎の風景がまたなんというか、悪意があるのではと思うほど閉塞感を滲ませている。行ってみよう。龍ヶ崎線に乗りたいしな。
磯野マグロ

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