おくら

人間失格 太宰治と3人の女たちのおくらのレビュー・感想・評価

4.0
太宰治のwikiを読みつつ鑑賞。
大方の流れや太宰の生死感、人物像は史実や研究結果通りに再現されていると感じた(付け焼き刃の知識ですが)。

太宰の友人による、『彼ほど人々に絶望しながら、人々に甘え媚びた男を知らない』という言葉を念頭に置いて作品を観てみると、他者への諦め、しかし無意識に愛情に飢え愛情を求め、それがそのまま与えられそうになると逃げてしまいたくなる、と言った呆れるほどに人間らしく愚直な人間性が良く描かれていると思う。

不倫、不貞といったところに焦点を置いて鑑賞した方のその是非についての意見が多いように見受けられるが、それは表面上のテーマであり、これは生死感の物語であるように思う。それがラストシーンで強く感じられたのが印象的だった。

この重苦しく浮世離れした彼の生死感が、現代らしい鮮やかな、変化のある映像とキャッチーな出演陣で観やすくまとめられていて、大衆に向けて太宰治という人物像を分かりやすく周知するにはうってつけの作品であると感じた。

まだ読んでいない小説も手に取ってみようと思います。
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