Semb

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのSembのレビュー・感想・評価

4.0
傑作。前半少しダレて微妙だったけど、殺人のシーンが入ってくる辺りのショットから急に緩急のスピード感が半端なく切り替わり、一気に引き込まれる。結局のところ、先住民の富を搾取する白人のグロテスクな欲望が産んだ悪意が描かれるわけだけど、その中でさらに搾取される女性の魂の鼓動が響き渡るラストの切れ味がすごい。レオナルド・ディカプリオはダメ男をやらせたらやはりピカイチで、喜怒哀楽のグラデーションの広さに本当に脱帽する。彼の半端な優しさと気の弱さが周りに悲劇を振り撒いていく訳だが、巨悪に操られる下っ端、という意味で本作における悪の所在についてはかなり悩ましい。ディカプリオに同情したくもなるが、彼の半端さもまた罪となってしまうのだと思う。自分の裁量で自分の行動を裁けず、唯一正直な気持ちで結ばれた妻さえも半端なで下手くそな嘘ゆえに失ってしまう哀れな男を本当に熱演している。脇を固めるロバートデニーロも燻し銀の演技で本当に素晴らしい。あのサスペンシブなベースラインのテーマ曲は昨年亡くなったザ・バンドのロビー・ロバートソン。最後の最後まで仕事人だった。
長尺過ぎて全体が引き延ばされた印象を感じるのは残念だが、傑作。
Semb

Semb