このレビューはネタバレを含みます
「先住民の女たちが病気で亡くなる前に、(オイルマネーの)受益権の道筋をつけるんだ」
1920年代にアメリカで起きたオセージ族連続怪死事件をマーティン・スコセッシ監督が映画化した作品。
石油資源の発見により潤沢な資金を得た先住民の遺産を狙い、ロバート・デ・ニーロとディカプリオが共謀し、次々とインディアンを殺害。自分たちの手は汚さず、殺し屋や医者、時には爆殺請負人を使って徐々に遺産の行き先を自分たちの元へと近づけていく。ディカプリオはモリーという先住民の女性を娶るが、彼女の家族も一人ずつ殺され、彼女自身の命も危うくなることに…。
よくディカプリオこの役引き受けたな…と思うくらいのクズっぷりで、ロバート・デ・ニーロも清々しいほどの悪。インディアンに学校や道路を提供したりして善き後援者として振る舞う一方、卑劣にインディアンたちを消す作戦を立て続ける。
差別まみれの作品でもあり、白人を憎むインディアンと、インディアンの財産を狙う白人の対立がエグい。象徴的だったのは、「白人なんかと結婚して。私たちの血を白くなっちまうわ…」というセリフと、「インディアンの命は犬の命より軽い」というセリフ。KKKが礼賛されてるシーンとかも怖かった。
最後にディカプリオが妻に注射の薬の中身を問われて、答えを間違えてしまったシーンが印象的。彼女のことを愛し始めていたからこそ刺さるラスト。後ろの捜査官のやれやれ…みたいな顔も忘れられない。
最後、登場人物たちのその後を紹介する舞台(手紙を書く音や牢屋が閉まる音とかを付けて語るやつ)みたいな演出もオシャレだった。
以下、セリフメモ。
「彼女はオセージ族の"純血資産"だ。遺産は丸ごと入ってくる。身を固める気はないか?」
「国はインディアンたちに何もしてくれないわ。捜査すらしてくれない」
「インスリンと一緒にこれを注射しろ。一回で全量だ」
「アナは顔が無くなってたのよ!煙で身を清めなかったから、神に連れて行ってもらえらない…」
「爆殺ならエイシーに頼め」
(ディカプリオの顔を見てモリーが)
「次はあなたの番よ」
「誰が学校と道路と病院を与えた?私が彼らを20世紀に連れてきたんだ!考え直してくれ。頼む」
「ビル、もう無理なんだ」
「モリーに近づいたのも受益権目当て?」
「違う。最初に彼女を車に乗せた。その時から気持ちが変わった」
「中身は何だったの?」
「何の?」
「注射の中身。あなたがくれた薬よ」
「…インスリンだ」
「ヘイルは終身刑になったのち、1947年に釈放。介護施設で生涯を終えた。アーネストは終身刑となった」
「1937年にモリーは糖尿病で死去。新聞の記事に、家族殺害への記述はなかった」