回想シーンでご飯3杯いける

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.8
20世紀初頭にアメリカで起こった「オセージ族連続怪死事件」を題材にした実話ベースの映画。1960~1970年代のアメリカを舞台にした実話ベースの作品を録ってきたマーティン・スコセッシがメガホンを取り、近代アメリカ成立の暗部とも言える、先住民迫害の歴史を描き出す。

これまでにもスコセッシ作品に出演してきたレオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロに加えて、ネイティブアメリカンであるリリー・グラッドストーンがディカプリオの妻を演じ、無口ながらも強い精神を持つ女性を熱演している。更に、ネイティブアメリカンの血を引くロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)が音楽を担当しているのだが、彼の持ち味である土着的でエモーショナルなサウンドが、本作の世界を見事に演出している事にも注目したい(これが彼の生前最後の仕事であると思われる)

スコセッシ作品の中でもビジュアル要素が強く、グロ描写も含めて、感情を揺さぶられるシーンが多い。老いてますます盛んと思わせる一方で、作品を追う毎に上映時間が長くなっている点には、首を傾げたくなる気持ちもある。

僕は、長尺の映画がむしろ好きなのだが、スコセッシのキャリアを考えると、周囲にイエスマンしかおらず、その結果、無駄に長くなってしまっているように見えるのだが如何だろうか? 「ワンマン社長の挨拶は長い」というアレである。ひと通りのストーリーが展開した後に、回想シーン→法廷シーン→ラジオ劇(?)のシーンと、種明かしが都合3回も繰り返されるのは流石にくどく、せっかくの映像表現のインパクトが散漫になっている感が否めない。

映画は監督と俳優だけで作られるわけでは無い。良きブレーンによる引き算を取り入れ、きりりと引き締まったスコセッシ映画を観てみたいと考えるのは贅沢だろうか。