みーやん

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのみーやんのレビュー・感想・評価

4.0
トシがばれる話ですが大学時代、自分でお金と時間を采配しながら劇場だレンタルだ(サブスク以前の話)と映画を観る本数が増えていったころが思い返せばリュックベッソンやタランティーノがガーンと出てきたタイミングでして。あとアメリも超満員で最前列しかも端の方しか空いてなくて首ひん曲げて観たなーとか、そういう時代でした。どうもそれ以前から名を成していた監督については「いわゆる名監督とかいわゆる名作・大作とかなんとなく苦手やなー」と感じていたフシがあり、スコセッシもそういう抽斗にほうりこんでそれっきりにしていました。なので本作がほぼ初スコセッシといってぐらいの、まあその程度の映画鑑賞歴なのでした。
なので本作もよくできてはいるんだろうけどまあちょっとご縁がないかなと思っていたのですが、アトロクのスコセッシ特集を聞いていたらスコセッシの作品は撮り方とか編集のテンポとかをつねにアップデートし続けていて若手監督がその文法をフォローするような状態だという話で、へーそれなら俺が観ても面白いのかも、と劇場に足を運ぶことにしました。結果じつに面白く鑑賞することができて、作品じたいの良さもそうですが自分の中でもいろいろと新しい発見があったので大台スコアにのせることにしました。

たしかに時間は長いのですが、長回しでぐいぐい視点を動かしてドラマを見せていく撮り方だったり前のシーンをちょい早めに終わらせたり次のシーンを食い気味に始めたりという編集のテンポ、あと音楽もほどよく音量が抑えてあって(でもネイティブアメリカンのスタイルらしき太鼓のビートだけはしっかり聞こえたり、お祭りの音楽がちょっと距離を置いて聞こえているようで低域だけグッとあげて不穏な響きを感じさせたりという技も使いつつ)といった工夫がこまごまと感じられました。そういった見せ方の工夫に役者の演技、あともちろん脚本そのものがあいまってこの先どうなっていくのかっていうサスペンス感がうまく持続していた体感ですね。ラスト近くなるとけっこうアッとおどろく語り口のジャンプもありますしね。

自分で思うにいわゆる大作っていうのは重厚な間合いや演出だったり、あともってまわった台詞回しだったりがあるだろうなっていうのが苦手ポイントだったようです。本作についてはそういうことでは全然なく、実に現代的な切り口になっていたのが肌にあったみたいですね。あと日曜朝イチからの回で心身ともにコンディションが良かったのかもしれません。水分も控えて臨んだし。

映画に貴賎はありませんが、まあたぶんこれが今年観た映画のなかではいちばん「ちゃんとした大作」になるんじゃないかな。他のレビューでも長さがネックになってなかなか入り込めなかった声もあるようですし、そのあたりコンディションとモチベーションしっかり持って劇場に行けるならぜひ大スクリーンで観るのが楽しいと思います。
あと製作にアップルも関わっているようですが、今後はとにかく家庭の視聴環境でサブスクを使って映画を観ていくことになるのだっていう方向だけじゃない未来が開ける可能性もあるのかなというのも映画館好きとしては明るい話だと思いました。そのへんでちょいと加点してるのもありますし、ぜひ劇場で観ていただきたい理由のひとつともいえるでしょうね〜。
みーやん

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