ドント

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りのドントのレビュー・感想・評価

4.3
 2023年。ホァ~~~大満足。足りないものがない、と言いたくなる愉快・痛快娯楽大作。ファンタジー世界を舞台に元は騎士、今は盗っ人のエドガン率いる(?)一味が繰り広げる冒険と探検とバトルの旅。
 本編125分くらいとファンタジーとしては短いがそのぶん圧縮とヤスリのかけ方が達人級でしかも軽妙。キャラの過去を小気味良く済ませ、性格や性質は細かに挟み込んだり「その役者がやりそうな役柄」=当て書きのように落とし込んだりしてスムーズに見せる。
 クエストの過程にも安易な「絆深めドラマ」などは混ぜない。成長物語もひとにぎり。そういうもんはひとり1シーンありゃいい、危機を共にしてりゃそれでいいんだ、と割り切ってとにかく冒険を転がし続けている。潔い。ハラハラドキドキをやりながらも無駄口と前述の当て書きにより、驚愕の展開とかどんでん返しとかもない。ただただシンプルに真っ直ぐにやっている。
 シンプルに真っ直ぐと簡単に言うが、複雑化する現代大作映画においてこれほど難しいものはない。むろん本作もゲーム原案であるからファンサはあるのだろう。が、目配せに寄りかかっていない。魔法や怪物が普通にいる中世的世界をゆったりと描いていて、一見さんにも限りなく優しい。さらに現代性もごく自然に加えていて絶妙のバランスと言える。
 無駄口はあるが無駄がなく、特別な材料は使っていない。それゆえ尋常ならざる呑み込みやすさを備えている。ただ本作、成績で言うと中盤までは「良」あたりで推移する。しかし最後にちゃんと「優」を狙ったクライマックスを準備しているので、我々は美味しいラーメンにアイスまでついたものをごちそうになった気分で家路に帰るのだ。
 問題としては現代的なミームやらネタやらに乏しく、あまりにうまいこと作ってあるので感想も「面白かった!」で終わってしまう点であろうか。だが「面白かった!」とスッキリさせてくれて、キャラが「あんがとよ!」とサッパリ去っていくような映画がいま、どれだけあるだろうか。そういう意味でもこういう映画がドシドシ出てきてほしいと切に願っている。あとアレよ、吹替も悪かないけど、字幕で観たかったね……
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