きゃしー

ザ・リバーのきゃしーのレビュー・感想・評価

ザ・リバー(2018年製作の映画)
3.4
構図に趣向が凝らされている。
いわゆるアート作品。
静かで、一つ一つのカットが長くて、セリフが少ない。
説明が少ないぶん受け手によって解釈に差が生まれるあたりは映画ファン好みかと。
ただ、前半部はインスタレーションを観ているような気分になる。

インスタレーションゾーンを抜けると、文明と縁遠い生活を送る5人家族のもとに、シティボーイのカナットがやって来る。
監督のQ&Aによれば、カナットは「資本主義の象徴」であり、ヒトというよりモノである。
これを踏まえて、カナットが5人家族の日常をかき乱す描写は、資本主義に翻弄される社会主義という解釈に落ち着こうと思う。

コンペ部門に出品されたこの作品、なんの賞も取らなかったのだけれど、映画祭のクロージングにて受賞者に笑顔で拍手を送り続ける監督の姿が目に入り、なぜかこちらが泣きそうになった。
TIFFは、映画祭全体でアートと商業の両立を謳う一方、コンペは作家主義に重きを置いているという。
2018年は審査員から誤解を招く発言が飛び出したことを踏まえると、作品選定側と審査員側の意思疎通に若干問題があるように感じる。
今後もTIFFが開催を続けられるように、コンペの在り方を一度問い直すべかではないか。
きゃしー

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