アゼルバイジャンで撮られたということで、おとぎ話のような風景と線路を挟み込むようにして建つ家々が主役級の作品。クストリッツァ的(主演俳優はまさに)であるのだけど、クストリッツァよのうにハチャメチャ感はないです。
「鉄道運転士の花束」の雰囲気もあり。
台詞なしということもあり、トーキーのようなコミカルな演出が多くて新鮮でした。
いろんな見方ができる作品だと思うけれど、一つの青いブラを通して様々な「女」が見えてくるストーリーで、男に所有されている女というのが浮かび上がるのが面白かったです。
ブラを手に家々を訪ねるせいで、その家の男が元運転士を怒鳴り追い出す。男のいない家の女は元運転士を誘惑したり(親切な女も、ストリップを見せる女も)、手玉にとって笑う女たちもいる。
女は男/家の所有物であることは、元運転士が結婚を申し込んで断られるエピソードで描かれているのは、立場の違う女たちを描く導入線だったのだろう。
女を所有する男、家を持つ男がデフォルトなので、犬小屋で暮らす少年と家はあるけれど女のいない元運転士は似たもの同士といえる。鉄道会社で働く女性は所有されていない女だから、彼らと同じくデフォルトから外れた存在。エンディングはそんな風に読めました。
なぜ元運転士が人びとから疎ましがられるのかが分からず、その点が見ていて気になったのでなんかエピソードが欲しかったかな。