great兄やん

ドンバスのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

ドンバス(2018年製作の映画)
4.3
【一言で言うと】
「惨劇の“シナリオ”」

[あらすじ]
2014年、親ロシア派勢力の分離派が一方的に独立を宣言したウクライナ東部のドンバス地方。そこでは、クライシスアクターと呼ばれる俳優たちが演技を行い、フェイクニュースが作られている。さらには、医師が支援物資を横取りしようとしたり、警察が新政府への協力といううそをついて市民から資産を巻き上げようとしたりしている。一方、国境では両国による砲撃の応酬が続いていた...。

“嘘”と“暴力”の戦争ーーー。

笑えそうで笑えない。今このご時世でなければただの“ブラックジョーク”として済ませられたが、明らかにそんな笑い事じゃ済まされないような怖さがこの映画にはある。

昨今ロシア・ウクライナ間で勃発している戦争。その“過程”を我々のような一般市民はニュースや動画などの“メディア”を通じて見ている訳だが、そこから見えてくる惨状を果たして“真実”のみで見ているか、それとも“懐疑”を含めて見ているのか、この“見方”によって今起きている戦争がどんだけ闇深いものなのかがガラッと変わってくると思う。

フェイクニュースとはよく言ったものだが...某少年探偵の「真実はいつも一つ!」なんて綺麗事抜かしてる事案じゃないっスよこれは(・・;)

まずなんと言ってもモキュメンタリーとしての“曖昧さ”を表現する演出がとても巧くて、最初は“映画”として観てたのに徐々に“ドキュメンタリー”としての生々しさを味わう感覚が鋭く伝わってきた上に、それを一種の“皮肉”としてオブラートに包んでいる所がなんとも言えない感情になった。

それに13のエピソードからなるストーリーも苦笑するものもあればジョークでは済まされない胸糞悪さもあったりと、正直ウクライナを単なる“劣勢国”として見なしていいのかと思わず揺らぎすら起こってしまうほど。

まぁウクライナのみならずどの国にも“恥部”というものは存在するが、ここまでありありと映し出したセルゲイ・ロズニツァ監督には正直畏怖しかない。
ドンバス地方に親ロシア派政権国家である“ノヴォロシア”という国家があるのも初めて知りましたし、やはりこういった映画を通じて“知る”事が我々にとって大切だというのを今一度強く感じましたね😔...

とにかくウクライナ=“弱者”というセオリーが今作によって根底から揺らぎが生じてしまう、社会主義が植え付けた“病巣”は今もなお続いていくという絶望をも感じさせる一本でした。

今作が余りにもタイムリー過ぎて最近制作された映画とばかり思ってたらなんと2018年に制作されたものなんですね(^◇^;)...にしても4年前からこんな“予見”を的中させた監督にはもう凄いとしか言いようがない笑

作中様々な衝撃的なシーンがあったが何よりも“嘘”で始まり“嘘”で終わるあの演出には思わず震えましたね😰...
我々はこれから何を信じてこの戦争を知ればいいのやら…嘘が嘘であると見抜けなければ、この“真実”は闇の中かもしれませんね🫣...