てっぺい

グリーンブックのてっぺいのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.5
【助演が主演の映画】
黒人差別と戦う助演が、実は自己の根深い孤独とも戦う重厚な人間ドラマでもはや主演な存在感。実話に基づいた話、クス笑いも満載、2人の友情にも心が熱くなる、要素満載の映画。
◆概要
第91回アカデミー作品賞・脚本賞・助演男優賞受賞作品。出演は「ロード・オブ・ザ・リング」のビゴ・モーテンセン、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。実話を元にしたロードムービーで、製作・脚本は、登場するトニー・リップの実の息子であるニック・バレロンガ。監督は「メリーに首ったけ」のピーター・ファレリー。
◆ストーリー
1962年、ニューヨークで用心棒として働くトニー・リップは、黒人差別が色濃い南部であえてコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
◆感想
印象としては、人種差別へのメッセージも内包した「最強のふたり」。色も出身も性格も違う2人が、互いに理解しあい、硬い絆を築いていく姿に心が熱くなる。
色濃い人種差別の中へあえて飛び込み戦う姿が軸ながら、この映画は“外れ黒人”のドクがいかに自分を変えていくのか、差別と孤独の両面からいかに解放されていくのか、そんなところに焦点が当たっていたように思う。そういう意味ではマハーシャラ・アリが主演の映画だとすら思える笑。
“自分は城の中に一人で生きている。黒人でも白人でもない外れ黒人だ”そうドクが雨の中叫ぶシーンがこの映画のピカイチ。白人のコミュニティでパフォーマンスをする天才ピアニストは、行く先々で露骨な黒人差別を受ける上に、黒人のコミュニティからも疎まれる。楽屋が納屋だったり、レストラン入店拒否だったり、夜の外出すら罪だったり、試着を断られたり、今の時代ではありえない露骨な黒人差別に襲われるドク。
さらに、黒人農民達からの刺すような目線や、ホテル宿泊者の黒人から受ける罵倒など、黒人からも疎まれるドク。バンドメンバーとすら食事を別にし1人で酒を飲むドク。差別だけでなく圧倒的な孤独を抱えるドクがこの映画で唯一気を乱す前述のシーンは、人種差別を描く他の作品と一線を画すものであり、製作側が1番描きたかったものだったのではないかと思った。
そして、そんなドクの心をゆっくりと解放していくトニー。ザ・無骨な性格ながら、暴行されるドクを救い、ドクを侮辱する者に怒り、“時間通りにドクを現場へ届ける”絶対的な安心感でドクの心をときほぐしていく様は見ていてとても心地いい。ドクにとって人生初のケンタッキーを無理やり食べさせるシーンが好きでした笑
ほっこりなのは、そんなトニーにも文才が少し備わる奇跡笑。ドクに書かされる手紙で奥様達がキュンキュンしてるのもほっこりながら、トニーがドクから認められるほどの文面が書けたくだりは、2人がお互いから受ける恩恵の象徴で、超ほっこりでした。しかし、最初にドクがトニーに言い放った“切り貼りの脅迫文みたいだ”の揶揄には笑いで声が漏れた笑。
「メリーに首ったけ」の監督ならでは、全体に散りばめられたそんなクス笑いもさすが。前述の“脅迫文”しかり、投げ捨てたドリンクを取りに戻らせるシーンなど、凸凹コンビならではの笑いがふんだんで見やすい。それも個人的には「最強のふたり」を彷彿とさせる要素でした。
驚くのは、ドクの数々の天才的演奏シーン。マハーシャラがよほどピアノを練習したのかと思いきや、別ピアニストの演奏に顔を合成しているらしい。(https://www.cinematoday.jp/news/N0107206)ピアノを死ぬほど練習した成果もアカデミー助演男優賞獲得の一因かと思いきやそうでなかったのか笑
アカデミー作品賞受賞は、数ある人種差別がテーマの映画の中でも、差別に加えてドクの孤独に焦点を当てた映画の深み、さらにそれが事実に基づいた映画のリアリティだというのが僕の解釈です。いい映画でした!

フォレストガンプのレビューで書かせてもらった、レビューのご依頼受け付けます企画、@Nagisa さんからのご依頼にお応えしました!他にご依頼頂いてた皆さんごめんなさい!
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