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楽園のmのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
3.2
あの時何が起きていたのか、わからない(はっきりと答えを出さない)という結末なんだと理解した。

彼が愛華を攫ってしまったのかもしれない。
愛華はどこかで生きているのかもしれない。

わからないものは誰だって怖い。
だけど、紡の台詞にもあったようにわからないままで良いのだと思う。
わからないから「答え」を欲して、その「答え」に救われようとして、個人を殺してしまったこの物語を見た後は、よりそう思う。

人は皆、人と見つめ合い、コミュニティの一員として存在することで自分を保っている。
小さくて閉鎖的な村で迫害され、尊厳あるひとりの人間として扱われなければ、心が死んでしまうのは当たり前のこと。
真実を突き詰めることは大事だけど、人の声を聞かず、ただ自分が救われたいからと誰かの心を殺してはいけない。


綾野剛さんのお芝居が今日もうまかった。
人と関わることに不慣れな人間の孤独な佇まい、目線の合わない話し方と常に怯えたような表情、内から込み上げる感情の処理が下手くそな泣き方、がくがく震えながら獣のように暴れる身のこなし。
そして何より、愛華の目に映った瞬間の、彼がこれまでどのように生きてきたのか痛いほど分かる悲しい顔。

生まれた時から村八分の標的にされ、人間としてそこにいられなかった彼の不幸は、綾野剛さんのお芝居によって表現が成立されていたように感じた。
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