Gan

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのGanのレビュー・感想・評価

4.3
8時間は観れる。
2016版と比べ、より物語の解像度が上がった。
白木リンという存在の位置付けが変わる。
戦争は居場所を奪う。当然、誰もが居場所を求める。そうして得られた居場所は、望む望まぬに関わらず、諦念と覚悟を持って受け入れられていく。
緩やかな悲劇の中にも、人々の根底に流れる何かは、茨木のり子の詩、『準備する』を思い出させる。

"むかしひとびとの間には あたたかい共感が流れていたものだ"

"たしかに地下壕のなかで
見知らぬひとたちとにがいパンを
分けあったし べたべたと
誰とでも手をとって
猛火の下を逃げまわった"

これらを"弱者の共感"と吐き捨てながらも、懐かしむことはないと懐古趣味を否定しながらも、我々は準備することを辞めないだろうと彼女は強い意志で締めくくる。

準備する。我々の生活も、延いては本作も、この言葉に集約されている気がした。
誰しもが準備を続けるのである。
明日のために。
Gan

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