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羅生門のGanのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.8
老婆は出てこない。ん、と思って調べたら、どうやら芥川の『羅生門』だけを下敷きにしたわけではなく、同氏作『藪の中』を融合した形で映画化したという。

冒頭の引き込み方から光の陰影を中心とした映像美、複雑な展開に元祖感というか、テキスト味、既視感を抱く。それもそのはずで、多くの映画監督が本作の構造を模倣し、数々の名作を世に送ったらしい。ユージュアルサスペクツとか、後述のレザボア・ドッグスとか。

土砂降りの中、半壊の巨大な羅生門、そこで雨宿りする面妖な男2人。この特異で魅力的な舞台設定の時点で、観客は前傾姿勢になるはず。そんなんずっこい。
脚本のみならず演出、美術に至るまで、全てが一貫したテーマを物語っており、コンセプチュアルでまとまりが良い。
人間の怖さと醜さが、これでもかと詰め込まれている。映像的には巫女の降霊シーンが恐ろしかったが、京マチ子演じる真砂が急に高笑いするシーンは真実味を帯びるとともに虚をつき、何よりもゾッとした。
最後の場面さえ、杣売りを信じていいのか分からない。晴れ間は少し覗いたが。

『レザボア・ドッグス』的な造りだと思って調べると、タランティーノは本作に影響を受けて制作したらしい。海外ではかなりエピックな存在っぽい。映画どころか、犯罪心理学の分野にまで影響を及ぼしているのだとか。

赤子の行方は、誰も知らない。
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