きのはる

岬の兄妹のきのはるのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
4.0
貧困女子系の本で読んだんだけど、明らかに生活保護の対象になりそうなのに生活保護を受けない人たちの中には「生活保護」そのものの存在を知らない人が結構いるらしい。普通に学校行ってニュースとか新聞読んで暮らしている層には信じられないほど無知で、仮にそれを知ったところで生活保護を申請する書類の内容を理解できない、漢字がろくに書けないといった事情があって、だったら役所の人に聞けばいいじゃんと我々は思うかもしれないが、無知な彼らにもプライドがあって幼少期から散々馬鹿であることを馬鹿にされ見下されてきたことを思うとどうしても聞けない、彼らの心はすでに徹底的に打ちのめされてしまっていて残されたプライドと理性を頑なに守らざるを得ないのだ。
このお兄ちゃんも足が悪い他に軽度の知的障害がありそう。ずっと妹の面倒をも見させられてきっと学校にもろくに通えなかったのだと予想する。そしてプライド、このお兄ちゃんの場合妹の存在がプライドそのものというか、「自力で妹の面倒を見ている」というのがお兄ちゃんに残された最後のプライド。それと自分に「無償の愛」を授けてくれるのが今も昔も妹だけだったのだろう。母は冷たい。警察官の友達はあくまで友達で、他に守るべきものがある他人である。こいつはお兄ちゃんの手を引いて役所へ行き生活保護受給の手助けをしてやるべきなんじゃないかと鑑賞中何回も思ったけど、そこまで面倒見てやる義理はあるのかなあとも思った。二人の関係がどの程度のものなのかは知らないが。制服警官ってべらぼうに忙しい。スケジュールも過密って聞くし。
この兄妹のベストな道は生活保護を受け、妹にはちゃんとした介護士が付いて、兄は心身を休めながら座り仕事の訓練をすることだろうが、ど田舎っぽいからな。都会生まれだったらまた違ったのかな。
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