「驚いたろ?彼はね、海の中でジュゴンに育てられたんだ」
学校と家庭で問題を抱える少女・琉花が、海で育てられた不思議な二人の少年・海と空と出会い、事件に巻き込まれていくお話。
圧倒的映像美と圧倒的わからなさ。前半はなんとかついていけたけど、後半のストーリーは難解すぎてハゲそうだった。それでもとにかく画面が美しいので楽しめる。映像美の暴力。
平たく言えば琉花のひと夏のヒーローズジャーニーではあるのだが、海と空の正体がなんであるかは提示されるわけではないし、わかりやすい起承転結はない。三幕構成だとは思うけど、デデの「あんたでいいんだよ。信じておやり。海と空を。そして自分自身を」というセリフ以外ではちょっとカタルシスを得づらかった。
ザトウクジラの歌の意味や、この作品の根っこにあるパンスピルミア説やバリヒンドゥー教を初見で理解するのは困難だと思う。それでもキャッチコピーの「一番大切な約束は言葉では交わさない。」という部分は伝わる内容なのではないかと思った。ラストシーン、ケンカして怪我させちゃった女の子に、言葉を使わずハンドボールを投げ返しただけなのが象徴的。自分もハンド部だったので、主人公ポストなんだと謎のポイントで共感してしまった。
以下、セリフメモ。
(ハンドボールで友達を怪我させた後)
「今日からだったのに…。あたしの夏休みはもう、終わっちゃったなぁ」
「僕は海!君は?」
「私の、長い長い、長い夏休みが始まる」
「皮膚が極端に乾燥に弱いんだ。海の中で育てられたからだろうね」
「人魂が…来る」
「(人魂)すごかった。連れてきてくれてありがとう、海くん」
「クジラの歌は、とても複雑な情報の波なんだ」
「君が琉花だね。俺が誰だかわかるだろう。知っているはずだよ」
「空…くん?」
「ソングがね。聞いたことのなかったソングが、聞こえるんだよ」
「ソングって…クジラの?」
「ジンベエザメ、海の中で模様が光ってた。あの時も…水族館の幽霊。見たの。小さい頃、光って消えるとこ」
「僕たちも同じものを見たんだ。そう、海の幽霊って呼んでた」
「誕生祭ってすごいお祭りが、海のどこかで起こるんだ。クジラの歌は、その予告であり、祭りのゲストを探しているとも言われている」
「祭りに立ち会い、そのメカニズムを解明すれば、海洋研究の飛躍的進化につながる」
「俺は宇宙は人間に似ていると思う。人間の中には、たくさんの小さか記憶の断片がバラバラに漂っていて、何かのきっかけでいくつかの記憶が結びつく。そのちょっと大きくなった記憶に、さらに色々な記憶が吸い寄せられて、結びついて、大きくやっていく。それが考えるとか、思うということでしょう?それはまるで…」
「星の誕生…銀河の誕生する瞬間にそっくり…か」
(突然キスされて)
「なんか…飲んじゃった」
「隕石。あんたに預けることにした」
「海くん!今…さよならって言ったの?」
「私も…ずっと…ずっと…一緒に!!」
「あたしなんか…」
「あんたでいいんだよ。信じておやり。海と空を。そして自分自身を」
「そこにも空と、海があった。これがこの夏に起きたことの全部」