ピョンちゃん

グレイ・ガーデンズのピョンちゃんのレビュー・感想・評価

グレイ・ガーデンズ(1975年製作の映画)
4.0
ケネディ大統領の妻ジャクリーヌの叔母ビッグ・イディとその娘リトル・イディの生活に密着したメイズルス兄弟によるドキュメンタリー。先日『セールスマン』を観た時に今作もリバイバル上映されることを知り鑑賞。噂に違わぬ傑作でした。
郊外の屋敷で2人きりで暮らしているこの母娘がとにかく異様。今観てもそう思うんだから1975年当時はもっと奇異に写ったに違いない。80歳近い母親は1日の大半をベッドで過ごし食い散らかした食べ物まみれ。ベッドの上は猫、猫、猫でそこらに糞尿し放題。ハエが飛び回り汚いことこの上ない。ほとんど裸のような格好でカメラに撮られても気にしない。50代の娘の方はなぜか常に頭巾を被っていてハイテンション。歌って踊って喋りまくり、撮影する兄弟を誘惑までする始末。強すぎる個性に恐怖すら覚える。母娘ともにかつてショービズの世界にいたセレブなので、出てくる話はポール・ゲティがどうのこうのとか(『ゲティ家の身代金』のあのゲティです)華やか。ただ全部古きよき思い出なので今や落ちぶれた2人は口を開けば喧嘩ばかり。あの時こうすべきだったああすべきだったと不毛な会話の応酬に脱力してしまう。メイズルス兄弟はそんな滑稽な彼女たちの日常を極めて客観的に捉えていて、ジャッジしないのが印象的でした。絶対に負けを認めない、どこまでも楽観主義を貫く彼女たちの姿にアメリカの本質を感じます。貴重なドキュメンタリーでした。
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