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まく子のKUBOのレビュー・感想・評価

まく子(2019年製作の映画)
3.6
私が審査員をさせていただいた2012年の「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを獲得して以来フォローしている鶴岡慧子監督の最新作。

この監督は本当に絵心がある。デビュー作からそうだったが、どのシーンも美しく心に残る。

旅館の息子「慧」の前に「コズエ」と名乗る美少女が現れる。母親が旅館に住み込みで働くために、いっしょにやってきたのだ。同じ11 歳とは言ってもコズエはモデルのように長身で大人びて見え、とても同い年には見えない。慧はコズエの存在が気になって仕方がない。

性に目覚める思春期の複雑な思いを、優しい眼差しで描いていく。慧役の子役「山崎光」くんの演技もよかったが、ここは鶴岡監督の演出が素晴らしい。コズエ役の「新音」も不思議な魅力で要注目だ。

だが、ここまでで終わらずに、物語は意外な方向に舵を切る。コズエは自分は宇宙人だと名乗る。死ぬことがない星から、死ぬということの意味を確かめに来たのだと言う。

SF的な設定と、再生を願う「サイセまつり」を通して、限りある命と輪廻というものを大きなテーマにしながら、少年期の憧れと家族の再生をも盛り込んだ。

西加奈子の原作があるから仕方ないが、最後の「ソラ」の部分は余計だと感じた。コズエとの別れまでにしておいた方が終わり方がスッキリしてたんじゃないかな。さらに言えば、別れのシーンも2人だけにしておけば『時をかける少女』みたいで美しかったのになぁ。

何はともかく、鶴岡慧子が草彅剛にケツを出させるまでの監督になったことにアッパレ!(私、この2人でお尻出してるシーン、好きです(^^))

心が温かくなる映画を撮り続ける鶴岡慧子監督を、これからも応援します。
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