半兵衛

天国の大罪の半兵衛のレビュー・感想・評価

天国の大罪(1992年製作の映画)
2.7
外国人俳優の起用、大金を投じられて作られた架空の町のセットなどいかにもバブル期らしい大作だけれど、そのやVシネを単にスケールアップしただけの実は馳星周の二番煎じみたいな(こっちのほうが先だけれど)犯罪映画というのがいかにも東映。でも吉永小百合が主演なのでどんどん話はおかしな方向に向かい、刑事だった彼女は愛人だった検事の子を宿して弁護士になり、そして産んだ子供と一緒にかつて敵対したマフィアのボスと暮らすという他の誰にもなしえないファンタスティックなアイドル映画へ。

それにしてもアイドルを枠組みを脱却しようとする吉永小百合の絡みにも挑むし男のパンツを脱がしたり、子供が誘拐されて発狂したりする体当たり演技に感服するが自分をよく見せようという長谷川一夫やキムタクにも通呈する「ファンのために演技をする」姿勢のため結局は本格にはならずなんちゃって演技に。女性が仕事をする様子もちゃんと描くというよりプロデューサーや舛田監督など作り手の男性による「独立した女性ってこんな感じだろ?」という浅はかな思想がにじみ出ていて恥ずかしくなる。でもそんなノリがこの時代は通用していたんだよね。

序盤の吉永小百合との絡みでねちっこいテクニックを披露した松方弘樹の職人プレー(でも検事の芝居はお奉行かと思うくらい大げさ)、この映画での悪を一手に引き受けたヤプールのような存在の悪徳刑事・清水紘治、マフィアのボスのはずなのにむちゃくちゃいい人なオマー・シャリフ、そんな大スターと共演して兄弟分のはずなのに凄い緊張している西田敏行と出ている役者の濃い演技も見所。

犯罪組織と警察との攻防が吉永小百合をめぐるメロドラマに変化して、更にとんでもない方向に向かう第二章に驚愕。大作感を出すために突然カナダへ舞台を移し、刑事のとき大して動きもしなかった吉永が突如披露するハードアクション、人の葬式に参加したとき一人だけ空気を読まずラーメンの大盛りを注文したくりぃむしちゅー上田晋也ばりに怪我人に絵本を読むことをせがむある意味大物な吉永ジュニアと色々とんでもないことになっていて必見。

木村大作による凝った画面のなかで展開されるぶっ飛びストーリーに困惑するなか、ラストで流れる作品の雰囲気に全く合っていない高橋洋子の歌にやられる。

それにしても何処を探しても当初出演する予定だった松田優作の面影がないが、松方弘樹とオマー・シャリフ出演によりどんどん話を引っ掻き回して直した結果なのだろうか。
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