ちゅう

アップグレードのちゅうのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
3.8
テクノロジーによる悪夢


先日おうちのテレビを4Kにアップグレードしまして、いろんな設定をしながら4K放送を見たりしてんたんですけど、それなりに綺麗になったなーとは思うものの感動したかというとそれほどでもなかったんですよね。
最近のテレビは色が鮮やかで明るすぎるのでまぶしくて目が痛いなーとか不満もあったりして。
ただ画面は大きくなったので迫力は増したんですけどね。

こんなもんかと思いながら他の部屋のフルハイビジョンテレビ(4Kテレビにアップグレードする前に置いていたもの)を見たんですけど、もうすでに小さく見えて精細度や色も物足りなく感じちゃうんですよ。
4Kを見てすごいと思う以上にフルハイビジョンの物足りなさを感じてしまっているんです。

これはダニエルカーネマンが提唱したプロスペクト理論の参照点と損失回避性という考え方で説明がつくんですが、めっちゃ簡単に言うと人間は得よりも損のほうを大きく感じる生き物だということです。
だから生活水準を上げると、下げるのが苦痛すぎて破滅する人がでてきたりするんですよね。

テクノロジーが発達して便利になったり楽になったりするとそれが普通になってしまって、それがない状態に戻れなくなってしまう。
そのテクノロジーの不便なところについては無意識的にこちら側(人間)が合わせるようになっていくんです、そのテクノロジーを失わないために。

テレビの例で言えば、綺麗で大きくなった画面が一瞬にして普通になってしまったということです。
不満だった明るすぎる問題とかはこちら側がそれに合わせて目が悪くなるという適応をすることになると思われます。
設定である程度どうにかなる問題ですけど、そんな面倒なことほとんどの人がしないでしょうし。

こうなると僕らがテクノロジーを操っているのか、テクノロジーに僕らが操られているのかわからなくなってきてしまいますよね。
それはとても危ういことなんだと思います。


テクノロジーで体の自由を取り戻した主人公グレイが事件を追っていく話。


ネタばれしちゃうと面白味が減っちゃう映画だけになかなか説明が難しいんですけど、サスペンスとしてドキドキできるし、SFとしての世界観もなかなか良かったです。
結構グロいですがギリギリ耐えれる範囲でした。
結末もよく考えるとありきたりな感じがするんですけど、ストーリーテリングがなかなか上手く、怖くてゾッとできます。

人間の精神や主観て一体なんなんだろうなと考えさせらたりもしちゃいましたね。


テクノロジーに対する警鐘というテーマのSFですが、その怖さをきちんと伝えてくれる面白い映画でした。
ちゅう

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