ぎー

ジュディ 虹の彼方にのぎーのレビュー・感想・評価

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)
4.0
【第92回アカデミー賞特集2作品目】
「心の大きさとはあなたが愛するのではなく、どれだけ人から愛されるかで決まる。」

主演女優レネー・ゼルウィガーの圧倒的演技力を堪能できる作品。
そこに『ブリジット・ジョーンズ』の面影は全くない。
心身共に疲れ切り、人々に消耗され、だがしたし、歌唱力は抜群。
本作が扱うジュディについては、正直『オズの魔法使い』の主演の女の子という知識程度しかなかったが、背景を少し伺うと、彼女がいかにジュディを演じ切ったかがよく分かった。
本作での演技が凄かったのは、レネー・ゼルウィガーの演技力が凄かったからに止まらないだろう。
レネー・ゼルウィガーも『ブリジット・ジョーンズ』以来のブランクやスランプで鬱に苦しみ、疲弊してきた。
だからこそ、本作が扱うジュディの人生を賭けた悲痛な中での魂のロンドン公演は、レネー・ゼルウィガーの人生を賭けた苦しい環境下での魂の演技でもあったのだ。
人々の心を震わせないはずがない。

この映画が扱う間違いなく大きなトピックの一つが芸能界の闇である。
人が人を商品として扱う限り、同じような不幸は繰り返される。
現代では流石に覚醒剤を飲ませて女優を痩せさせたり、それに伴う不眠症を解消するために睡眠薬を飲ませたりすることは無いかもしれないが、特に若くして芽が出ることが求められる業界だけに、多かれ少なかれある程度若者達に、少年少女達に過大な負荷をかけていることは間違いない。
更に問題なのはそういった負荷をかけた若い時代を過ごさせて、身体的に精神的にある程度支障をきたさせた上で、商品として散々消耗して、用がなくなったら大人達は捨ててしまう。
だからきっと芸能界で薬物の蔓延や自殺が無くならないのだろう。
改めて痛感させられた。

もう一つ問いかけてくれたのが、スターとして脚光を浴びることが果たして幸せなのかどうかということ。
ただし、健康や家族、財産を犠牲にして、という条件付きである。
おそらくほとんどの場合違う。
少なくとも自ら選択していない場合は。
そして、ジュディは選択していない。
幼少期に半ば大人達に言いくるめられ、脅迫されていたのだから。
だが彼女が時代を選ばず多くの人々を感動させたのも間違いない。
彼女が歌った『虹の彼方に』を旗印として掲げた性的少数者の権利が僅かながら認められ始めているのだから。

⭐︎1番印象に残っているシーンは、ラストシーン。ラストの『虹の彼方に』を聞いて涙しない人間はいない。そもそも映画を見ている我々は世界中の全人類が知っているあの名曲がどこで出てくるのかずっと待ち続けて、この1番重要な場面でそれが出てくる。そして、その歌唱にジュディの、レネー・ゼルウィガーの、ファンの想いがドッシリと乗ってくる。凄い体験だった。
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