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アイ・ラブ、ユー・ラブ(英題)
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『アイ・ラブ、ユー・ラブ(英題)』に投稿された感想・評価

[スロバキア、他者と繋がる"愛"について] 70点

1989年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ドゥシャン・ハナーク長編四作目。スロバキア映画鑑賞会企画。前作『Rose Tinted Dreams』の3年後に製作された精神的続編のような作品だが、その内容から上映禁止となったため、実際に公開されたのは革命後、つまり次作『Quiet Happiness』よりも後のことだった。本作品を前作の精神的続編としたのは、脚本担当がドゥシャン・ドゥシェクとハナークの二人体制だったのがこの二本ということ、そして前作の主人公ヤクブを演じたユライ・ヌゥオタが同じような役で再登場していることから勝手に呼んでいるだけなのだが、人間観察の立脚点は一般的だった前作よりも"個人"に傾いている次作に近く、正に中間にある作品と言える。本作品の主人公は電車の荷物搬入係だった小柄な独身中年男ピシュタである。女好きでなぜかモテまくる長身の同僚ヴィンコにくっついて、彼もヴィンコのように女性を扱おうとするが全く上手く行かず、結局酒浸りになって認知症の母親が一人で暮らす実家に舞い戻る。彼は特に同僚のヴィエラに恋していたのだが、彼女はヴィンコの愛人の一人であり、ヴィンコは彼女をウザがってピシュタとくっつけたがっているという複雑な三角関係が、全く進展を見せないまま前半1時間が経過する(この感じも前作に似ている)。だが、ガス漏洩事故によってヴィンコが亡くなると力が不均衡になって、遺された二人の内側が表面化してくる。ピシュタはどこに行っても、誰からも相手にされない存在であり、その逆境を前に酒を飲んで陽気さを取り戻し立ち向かってきたせいで、更に信用を失っていた。ヴィエラは白馬の王子様を夢見続けていた。

ラストは少々信じがたい展開なのだが、ここに関わってくるのが認知症の老母である。彼女の夫(つまりピシュタの父親)は暴力的だったと示唆されているが、認知症であるがために夫の影から逃れられておらず、今でも彼の帰りを待ってカトラリーを磨いている。そんな彼女が終盤でカトラリーを庭に埋めようとするという描写があることから、ピシュタの戦いを間近に見たからか、彼女は徐々にその影響下から逃れつつあったのだろう。そして、死んでまで影響力のあるヴィンコの影に翻弄される二人の見る方向を無理矢理ヴィンコから互いに向けさせたのである。その点では、最後まで互いを信じられなかった前作とは対照的なラストになっている。

ハナークは本作品について、広い意味での"愛"、つまり人間が他者と親しくなろうとする深い欲求を描こうとした、と述べている。人間同士が繋がることの難しさを繊細に描いた一作。