メモ魔

I am Sam アイ・アム・サムのメモ魔のレビュー・感想・評価

I am Sam アイ・アム・サム(2001年製作の映画)
3.6
子育てにおいて愛情は最も重要なものの一つだけど、愛情だけで子育てはできないんだって部分を強く教えてくれる映画だった。

この作品は、平均よりIQが低い(障害者といえばすんなりと伝わるのかもしれないが直接的表現はなんか、、分からないけど嫌い)男性が、子育てをする上で様々な障壁にぶつかる話だ。
児童福祉施設が、主人公サムは子育てをする能力が著しく低いとして、親権をサムから剥奪しようと裁判が行われる展開になっている。

児童福祉施設が子供を守ろうと躍起になるのは良いことだが、こうして子供も親も愛し合ってる中にちゃちゃを入れるのはどうなんだろうかと最初は思った。
でもお互いが愛し合っていたとしても、今後娘が社会で生きていくためには愛情だけじゃ賄いきれないお金や教育の問題が出てくる。本人達が愛情だけでどうにかなると軽い気持ちで年月を進めてしまうことが、最終的にお互いが1番不幸になることを児童福祉施設の人は分かっているからこそ強気に出ていくんだろうな。サムに厳しく当たる相手側弁護士だって、裁判長だって、本当は愛し合ってる親子を引き離したくはないはずだ。それでも語気を強くしてサムに親権を問うのは、みんなルーシーの今後を思ってのこと。
難しい問題だよなほんとに。

個人的には2つのシーンがグッときた。一つ目は弁護士リタがサムの家を訪ね、自分の劣等感を告白するシーン。
[君は生まれつき優秀だから僕の気持ちなんて分からないんだ。]
[自分だけが苦しんでるとでも?じゃあ私はどうなるの?夫は私よりも完璧な女と浮気してる。息子にも毛嫌いされてる。すぐ息子に汚い言葉で怒鳴り散らしてしまう。、、
毎朝のように味わうわ。挫折感を。周りのみんなは誰も彼もが立派に見える。私だけがダメなの。、、どんなに頑張っても、、立派な人間になれないの]
リタが自分の劣等感をサムに打ち明けるシーン。サムは自分が周りと違ってハンディがあるからいくら努力しても無駄だと言うけど、じゃあサムが言う普通なら、努力すればなんでも叶うとでも思っているの?じゃあ私には努力が足りないとでも言いたいわけ?
そんなリタの怒りをこのシーンに見た。誰だって世の中にハンディを貰って生きてるんだ。だから自分だけが特別努力しても実らないなんて言ってるサムが許せなかったんだろうな。リタからすればサムが障害を理由に努力から逃げてるように見えたんだろ。時に普通であることは普通の責任を負わなければならないし、その責任が普通の人にとって背負いきれない重圧になることもあるんだ。だから不自由だからって特別自分だけが不幸って思わないでほしいんだよな。せめて努力の姿勢を見せてほしいわけだ。

もう一つグッときたシーンは、最後のシーン。里親のランディがサムの元へ来て、自らの親権をサムに返そうとする。
[私は証言しようと思ってたの。自分がルーシーを世界で1番愛していると。でも言えないわ。嘘になるもの。]
[それは、、僕が思ってるのと同じ意味かな]
[そうよ。明日法廷で空いましょう。座らせてね。あなたの隣に。]
[ランディ、もし僕が1人で子育てをできないと打ち明けたら、判事さんに言うかい?]
[いいえ]
[、、、僕はルーシーにはママが必要だと思ってたんだ。誰かのヘルプがいるけど、誰でも良いわけじゃない。ルーシーの絵の赤い色は君のことだ。きっと君のことだよ。]
このシーン、良かった。親権がどうとかそんなことは問題じゃないんだよな。要はルーシーが幸せに暮らしていける環境に必要なものがなんなのかが重要なんだ。それを考えたランディは、それが里親でなくサムであることを痛いくらい悟ってしまったんだと思う。だから親権を譲りに来たんだ。それに対するサムの受け答えも良かった。親権を自分の元に置くことで頭がいっぱいだったサムが、最後は自分から親権を明け渡してママの存在がルーシーには必要だってことを打ち明けたんだから。自分がルーシーのそばにいたいからって理由で戦ってきたサムが、ルーシーの今後について初めてしっかりと考えられた瞬間だった。みんなルーシーが本当に大切で大好きなんだなって思った。

全体を通して気になった点はカメラワーク。
海外ドラマ(特に24とかlost、プリズンブレイク)で多用される映像を同じカットで拡大して躍動感を演出する方法。これ戦闘シーンとか、たまに使うだけなら気にならないんだけど、この映画は圧倒的に使いすぎ。目が疲れる。確かに普通に映すよりキャラの切迫した感情が出せるのかもしれないけど、ここまで映像をグラグラ揺らされるとストレスでしかない。見づらい。魅せ方はあくまでそのシーンを飾る者であってシーンを見る視聴者側がその映像技法を頭で認識するレベルまで使っちゃいけないんだなぁ〜ってこの映画を反面教師にすることができた。

総評
登場人物みんながみんな、子供を想う気持ちで満ちている。だからこそこうやって大人達が親権について争うことになるんだよな。普通じゃないことは罪じゃないし周りがとやかく言うことじゃない。でもその娘は?自分のパパが自分より子供だったら誰を頼って生きていけば良いの?
そう考えるとこうやって親権について真剣に裁判してくれる大人達もみんな良い人だ。他意はなく本物の心配からくる感情でサムを問い詰めるからこそ、この作品は悲しい。
[愛情だけじゃ賄えない現実]って部分を強く感じる作品だった。

3.6点
メモ魔

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