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ゲッベルスと私のodyssのレビュー・感想・評価

ゲッベルスと私(2016年製作の映画)
2.5
【新鮮味がない】

ナチの最高幹部で宣伝相を務めたゲッベルス。その秘書だったという、103歳になる女性へのインタビューを中心にしたドキュメンタリー。

103歳という年齢がすごい。それは彼女の顔が皺だらけであることに如実に表れていて、あたかも日照りが続いて水分を失いヒビ割れが一面に出来た田んぼを思わせます。
美しくない、というかはっきり言って醜い。
こういうヒビ割れた顔を延々と見せられるのは、たまったものではありません。

映画自体もあまり面白みを感じませんでした。
ゲッベルスの演説や発言は、今からすればいかにもナチでファッショ的ですが、当時はそれなりに支持を得ていたわけで、そこに踏み込まないとナチを解明したことにはならない。

強制収容所の悲惨な映像も、初めてこの種の映像を見る人にはショッキングでしょうけれど、ナチもの映画はこれまでドキュメンタリーを含めておびただしく作られてきているわけで、そういうものをある程度見ている人間には新鮮味がありません。

「ユダヤ人虐殺は知らなかった」とは当時生きていたドイツ人が戦後になってした発言の常套。本当かどうかは分からない。最近の研究では、実際には知っていた人間が多数だったとされています。

親しかったユダヤ人の友人を案じる気持ちは噓ではないでしょうが、でも彼女の失踪から分かることはあったはずなんですよね。そもそも、ナチ時代にはユダヤ人は公職から追放されていたわけだし、そのことは大人なら誰でも知っていたわけですから。

「白バラ」の抵抗運動について、「あんなことをしなければ死ななくて済んだのに」と率直に言っているところは、ある意味、貴重な発言だと思いました。今では「白バラ」は英雄扱いですけど、彼らの犠牲に当時はほとんど誰も共感を寄せなかったのです。

総合的に見て、ナチもの映画としてさほどの出来とは思われませんでした。
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