リミナ

万引き家族のリミナのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.8
何かしら欠けていた人達が集まってできた疑似家族の物語。

タイトルと冒頭シーンから"万引き"が目を引き、単なる貧困家族の物語かと思わせて、徐々にその歪な実態が見えてくる。
物語の見せ方として、終盤まで家族外部からの視点はほぼなく、捕まって初めて警察という"正義"の視点が介入する。

中盤まで平然と犯罪やそれに近しい行為が行われてもさほど嫌悪感もなく見せられるのは、生活感のある家庭での温かみのある日常描写のおかげか。
子役も含めた俳優陣の自然体な演技がそれを後押しする。
そして終盤で警察の視点から発せられる言葉の数々は一定の正しさはあるものの、どこか価値観の押し付けのようにも聞こえてしまう。
知らずの内に家族側に自分も立っているような気分に。
後の『怪物』のように当事者と第三者による視点の違いの描き方が巧い。

子供は親を選べない、だが疑似家族だからこそ選択権が生まれる。
しかし、その選択権も警察の介入により、再び虐待を行う親元へ戻ることになってしまったりんは救いのなさが感じられる。

映像はどこかドキュメンタリー風で真実味があり、ここぞという場面での長回しは引き込まれる。
細野晴臣氏が手掛けた劇伴も過剰さがなく自然に溶け込んでおり、物語の展開に応じてときに不穏さを与えるものになっていた。

欠けていたものを無理やり埋めてもいつかは崩れてしまうのだなと。
リミナ

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