シャチ状球体

Love,サイモン 17歳の告白のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

Love,サイモン 17歳の告白(2018年製作の映画)
3.0
物語と直接は関係ないけど、人の体液に触れるところだった、という話にサイモンが「(HPV)ワクチンを打たなきゃ」というジョークを普通に返せる環境、日本だとあまりなさそう。男性の摂取は全部自費だし……。

悪気なくゲイ差別をしてくる父親や自動的に異性愛者として扱ってくる周囲の人達。そんな環境だから、同じようにゲイであることを隠して生活している匿名のブルーにサイモンが惹かれていく過程には説得力がある。

ジャンルはコメディになってるけど大嘘で、『ブルックリンの片隅で』を少しマイルドにした程度にはシリアスな展開ばかりが待ち受けている。
後半までサイモンがマーティンによるアウティングの強迫に怯えるのを見続けないといけないし、異性愛者に擬態するためにした行動が周囲の人に裏切りや不誠実だと非難されたり、孤立したりするのに全然救いがない。

最終的にサイモンの味方になってくれる人もいるとはいえ、ゲイであることが個人の問題だという風に片づけられてしまうのは全く良くない。
最後にアクションをするべきなのはサイモンじゃなくて性的マイノリティに負担を強いる異性愛者の側のはずで、ブルーも最後まで正体不明のままの方がリアリティがあった。
アウティングされても努力で乗り切れって?それで今までどれくらいの人が死んだと思う?

正直、無理やりハッピーなエンディングに持っていくよりもある程度ビターに終わる方がよっぽど現実的。同じ設定、同じ舞台でちゃんとした監督と脚本家がリメイクしてほしい。
実際にサイモンみたいな人にこんな出来事が降りかかったら、マーティンやアビーとかとは絶対元通りの関係ではいられないよ……。
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