ふじこ

ダン・エルドン 〜運命の旅〜のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

実在した戦場カメラマン、ダン・エルドンの半生を描いた作品。

各地を旅しているっぽい若い男性、分厚いノートに書いたり貼ったりコラージュして記録を残している。これが若きダン・エルドン。
文明の最先端みたいな場所から、土埃に塗れて明日をも知れぬ暮らしの一端に触れ、家に帰って寄付を集めて支援しようと思い立つ。

どんな映画か知らぬまま観始めたので、最初は大学ゥ~!パーティ~!支援やっちゃおうずぇ~!みたいなノリで仲間たちとお金を集めて思い出作りや実績や先々の為の活動実績作りみたいな感じで行ったのだと思っていた。
それ自体がどうとかではなく、このノリで最後までは辛いな…と思っていたら、そうではなかった。

支援を募り、仲間達と食料物資等を届けに行った先からこの映画が始まると言って良かった。
前線はまだ先であるものの、危険な雰囲気を察して帰ろうとする仲間達を見送り、一人で先を目指すダン。危険であろうと自分の目で真実を見たかったのだと思う。
そうして辿り着いて自らの目で見た現実と、道中出会った報道カメラマンの人達の活動から、ダンも現状を伝えるカメラマンを志す。
現地に届いた物資は、銃を持った"更に力の強い者"に奪われていく。
いくらでも安く銃が入ってきて、そしてそれを流す誰かが居て、本当に届けたい人達に届かない物資だけが流れていく。"支援が略奪を生む"の台詞が重たい。

家族の反対を押し切って見習いカメラマンとして前線を駆け回り、やっと写真が認められて正規の報道員となり、帰国の為の準備をしていると、ホテルの近くで衝撃が起こる。
仲間が皮肉交じりに"支援活動"と呼ぶ、ヘリに搭載されたミサイルで爆撃しているのを屋上から確認。現地の人に真実を報道してくれと頼まれ、安全なのを確認してから現地へ向かうと、破壊しつくされた建物と瓦礫に埋もれた人達の姿。情報が間違っており、爆撃されたのは一般市民だった。
そこに、現地でよくしてくれた友人の姿を見つける。瓦礫に押し潰された手として。

同じように仲良くしていた、その友人の息子(だったと思う)が恨みを込めた目をダン達報道員に向ける。
爆撃したのは自分達の国じゃない、と訴えるけれどざわついた空気は収まらず、遂に武器を持った現地の市民に追いかけ回される。
なんとか逃げ延びた人もいるが、ダンはそこで命を落とす。

報道の人が現地で命を落とすニュースはたまに聞くし、報道以外でも支援の人も亡くなっている。
これは誤爆が切っ掛けだったけれど、同じくらい聞く"誤爆でした"のその後はどうなっているんだろう。手を下した国は何かフォローでもしているんだろうか。それとも、支援していると言う名目を掲げてなかった事になるんだろうか、そんな事も知らない。

貧困や病、飛び交う銃弾のすぐ近くで息を潜めていても子供達の笑顔は明るくてとても可愛らしかったのに、勘違いやすれ違いで濁ってしまうのが悲しかった。
勘違いで殺された腹いせに、勘違いでまた無関係の人を殺す。
まさに、死んだ者だけが戦争の終わりを見る。
ダン・エルドンが観せたかったものを間接的にでも観られて良かった。

"死は地平線"
"そして地平線は視野の限界でしかない"
ふじこ

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