ギズモX

きかんしゃトーマス トーマスのはじめて物語のギズモXのレビュー・感想・評価

5.0
【線路は続くよどこまでも】

『きかんしゃトーマス』の原作『汽車のえほん』の出版70周年記念作品。
模型劇及び原作の最初期のエピソードを今風に再編集したストーリーであり、本作でしかお目にかかれない緑色のトーマスが大井川鐵道で期間限定で走ったりと、CGアニメ版中期のトーマスを代表する作品だ。

『きかんしゃトーマス』は物心が着いた頃から大好き。
個性ありすぎるキャラクターや破茶滅茶な日常を描いた物語、そして事故。
僕が一番好きなトーマスは最初期の模型劇の頃だけど、このCGアニメ版も同じように大好きで、細かい動作やアングル、人間の動きなど、模型劇ではできない演出がCG版の最大のウリだろう。

また、『きかんしゃトーマス』は子供向け作品としては異例の経歴を持つ作品である。
現実を反映させた設定やお話、機関車の詳細な解説などなど、子供向けでありながらもリアリティを重視したその物語は、鉄道の魅力を伝えるには十分すぎる内容だった。だが、それと同時に機関車の難がありすぎる性格や、えげつない描写など多くの問題も抱えていたのである。
本作のエピソードの一つとして登場してくる『でてこいヘンリー』のお話しはその最たるものだろう。
敷かれた線路の上でしか走れない蒸気機関車が、命じられた仕事を何度も何度も失敗して、その度に上司に説教される。
トーマスの物語はこれの繰り返しだ。

しかし、そういった問題点を一番よく理解していたのは製作者側だったのではないかと思う。
『きかんしゃトーマス』はシリーズ全体を通して働くことの大切さを描きつつも、だんだんと互いを認め助け合う優しさみたいなものが形成づけられていき、千差万別多種多様な機関車が次々と登場して活躍するようになっていった。
また、事故はより過激になったが、それもトーマスらしさを表す個性の一つとなる。
『きかんしゃトーマス』は機関車が機関車であることの誇りと喜びを見つけ出す物語なのでもある。
そしてこの『はじめて物語』も、今見ると問題が山積みな最初期のエピソードを、新しくソドー島にやってきたトーマスが"やくにたつきかんしゃ"となるために奮闘していく成長物語として上手にまとめあげている。(模型劇の頃と比べるとみんな性格が丸くて最初見た時驚いたのは内緒)

線路の上でしか走れないのなら、その線路の世界を広げたらいい。
本作で「世界を見て回る」と豪語したトーマスは、この後本当にソドー島をとび越え世界一周を成し遂げる。
線路はどこまでも続いたのだ。

ラストの絵本とのシンクロは、子供の時に感じたワクワクが蘇ってきてマジで泣く。
懐かしさと温かみを感じる最高の作品だ。
いつまでも僕の1番でいておくれ。
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