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殴られる彼奴(あいつ)のkyokoのレビュー・感想・評価

殴られる彼奴(あいつ)(1924年製作の映画)
4.2
信頼していた友と愛する妻に裏切られ嘲笑という殴打を食らった男が、”彼奴”という名無しの道化となって日々殴られながら笑われ続けることで己の人生を悲劇から喜劇に変えようとする、心も肉体も痛い物語。

出だしは「禿げとるやないか」な頭髪がめちゃくちゃ残念だったロンチェイニーが、ドーラン顔になったら一気に男前度があがり、どこかホアキンに似てなくもなく、美しい曲馬乗りの娘が同じサーカス団のイケメンと恋仲であることを知っていながら暴走気味に迫るあたりはなかなかに狂気。その懐からライフルでも出してかたっぱしから大笑いする観客を撃ち殺したら完全『ジョーカー』だなと思った。

忘れかけていた愛は男をかつて自分が味わった屈辱に対する報復へと向かわせ、思いを遂げるもその終焉はあまりにも切ない。優しくて哀しい「幸せになろう」に思わず涙。
人間の弱さも哀愁も狡猾さも愛のキラキラも動物大活躍(相棒の恋を後押しする馬!最高!)も、85分あれば十分に詰め込めるのだな。しかもサイレントで。
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