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マリア・ブラウンの結婚のドントのレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
4.1
 1978年。チョー面白かった。大戦中のドイツにてドガーン!バゴーン!と街が爆撃をブチ食らっている真っ最中にオラァ役人逃げンなァ!認め印捺せェ!とハチャメチャな結婚をしたブラウン夫妻だったが夫は翌日くらいに出征し戦後も帰って来ず。交際3週間結婚一日、米軍占領下の厳しい生活環境ながら夫を愛し続けて待ち続け、何でもしたるでエンヤコラなタフネス女マリア・ブラウンさんの太腕繁盛記。
 いろんなことが起きるのであるがマリアさんの「あんた愛してるよ!」は終始ブレることなく、そのためならズルも水商売もハッタリも新興企業のおじさん社長の秘書兼愛人になるのも何でもやるしどんな壁だって乗り越えたり蹴り倒したりする。その姿に悲壮感などなく、むしろおじさん社長には「体だけの関係でヨロシク!」と宣言したりする。当時の社会状況や女性が置かれた立場などはさておき、とにかくマリアは潔い。自立している。強い。強すぎて死人が出たりもするがとにかく強い。
 マリアの夫への愛とはつまり「自分が好きな人と添い遂げる、どうあろうと添い遂げてやる、どんだけでも待ってやる」というエゴでもある。しかし瓦礫や復興工事の音に囲まれても自分の意を貫く様子はたくましくてクールですらある。
 マリアの潔さ強さで最後まで押し続ける豪腕映画でありつつ、男女の愛や心の機敏、広い意味の「面白さ」をあけっぴろげに語る。マリアの強さと周囲の弱さに演出も奉仕していて、彼女を中心に映画が音を立てて回っている。暗がりの中で目だけに光の帯が射す演出とか劇画っぽくてイイ。最後も全力疾走してゴールテープ切って海に落ちたみたいなパワーがあった。当時はもちろん、今こそ輝く作品のひとつではなかろうか。
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