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V.I.P. 修羅の獣たちのひこくろのレビュー・感想・評価

V.I.P. 修羅の獣たち(2017年製作の映画)
4.5
骨太で男臭くて熱い社会派ミステリーで、文句なしに面白かった。

犯人逮捕のためなら違法捜査さえ平気で行なう強引なチェ刑事。
自らの未来をかけて組織のために奔走する国家情報院のパク・ジェヒョク。
二人はともにグァンイルという青年を捕えようとするが、目的はまったく異なる。
グァンイルが北朝鮮のV.I.Pの息子だからだ。

殺人犯として逮捕したいチェと、V.I.Pとして逃がしたいパク。
その攻防戦に、国家情報院にはCIAが、チェには北朝鮮から来た元刑事のリ・デボムが絡んでくる。
警察が逮捕したかと思えば、国情院が割り込み、別件で彼を奪う。
かと思えば、血眼で新しい証拠を見つけ出したチェらが再び彼を逮捕にかかる。
国情院は新たな手を使って、グァンイル確保に動き出す。

話はかなり複雑なのだが、時系列に沿って順に描いているのと、章立てになっていることで、観ていて混乱することはない。
逆にそれぞれのキャラクターがしっかりと立っているので、すっきりと観られるのがエンタメとして上手い。

駆け引きしながら、相手の裏をかいて、自らの信念を貫こうとする二人のやり合いはとても熱い。
そんななか、一切ブレることなく、極悪人でい続けるグァンイルの存在もたまらない。
ふてぶてしく、ずる賢く、大胆で、猟奇的で、残忍なイ・ジョンソク演じるグァンイルの悪役ぶりは圧倒的で、映画史に残るほどだと思った。

いったい、どちらがグァンイルを押さえるのか。終始、ハラハラとさせながら、後半以降は、予想以上の怒濤の展開を迎える。
エピローグに至るまでの一気に畳みかけるような展開は、息を呑むほどだった。

社会派の要素も大量に盛り込まれているが、とにかくエンタメとして抜群に面白い。
ただし、残忍な描写が尋常ではないので、グロ耐性がない人は危険だと思う。
本当に吐きそうになるほどにえげつない描写があるので、その点だけは気をつけてほしい。
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