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トリノコシティの都部のレビュー・感想・評価

トリノコシティ(2017年製作の映画)
2.1
ボーカロイドの楽曲の実写化という頓珍漢な企画の割には、小中学生向けのSFファンタジー映画として可もなく不可もなくな仕上がりを得ており、予算に応じた物語と展開はきわめて潔い作りで好感が持てる。

『あなたの名前はなんですか──10文字以内で答えよ』
という原曲の歌詞をそのまま最初の台詞として持ってくるセンスから始まるので、これダメな奴かな……という危惧はあったのですが、前述したように思ったよりは酷くない。でも楽曲の映像化/物語化にあたり、展開が歌詞をなぞったり台詞が歌詞そのままなのはやっぱりダサい。因習村の童歌に準えたような殺人事件じゃねぇんだぞ。

自分の居場所を求める主人公が、トリノコシティで亡霊の悔恨を果たして成仏させていくという筋書きが早々に示されるのはよくて、前半に凄まじい勢いで消化されていくエピソード群は描写の薄さゆえに浅慮の一言だがこのハイテンポな語り口は退屈を紛らわしてくれる。ただ本当にドラマとして物語全体に積み重なるものがないので本当に説明パートとしての尺の消費と考えるとむしろ長い気もする。

後半の主軸となる事件も感動劇として使い古された題材なのが味気なく、一応のどんでん返しが用意されているけれど何せ描写がろくに足りていないから説得力にも驚きにも欠けるのが惜しい。この展開自体はよくある奴だしね。そこから葛藤を通して主人公は最後の選択を迫られるわけだが、ドラマを積み重ねていない彼女の言動に重みはなく、このやけに湿っぽい物語の姿形を考えると既定路線と言える結末を迎えたのは肩透かしではあった。楽曲の実写化なんて感性によって拡張性は無限大なのだから、もっと独自性を発揮してもいいように思う。
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