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メディアが沈黙する日のblacknessfallのレビュー・感想・評価

メディアが沈黙する日(2017年製作の映画)
3.8
ハルク・ホーガンと親友の元嫁がプレイしてるセックス・テープが流出。ホーガンはそれをサイトに流したゴーカー・メディアをプライバシー侵害、名誉毀損で訴えた。
よくあるセレブとメディアの訴訟だが、その裏にはメディアの独立性を潰そうとするある人物の存在が明らかになる。

本作は2017年の作品でトランプが大統領に就任したことに対するメディアの危機を訴えることに主眼をおいている。
トランプ前からアメリカではメディアに都合の悪いことを報じられた大富豪や権力者が訴訟や買収、要するに金に物を言わせ手段を選ばずメディアを抑え込もうとする動きが顕著になっていた。
ホーガンの裁判もその流れでにある。ホーガンはこの頃スキャンダル続きで人気も低迷していたので高額な訴訟費用と弁護士料の出所が疑問視されていた。資金提供者がいるのか?
そもそも訴訟はホーガンに取ってリスクがあった。セックス・テープの中でホーガンは人種差別発言をしていた。流出されたシーンにそれは入っていない。裁判の過程でテープの全貌が明らかになり人種差別発言が明るみに出たらレスラー生命が終る。
ホーガンの危惧は的中する。テープを撮影した親友の証言(知らずに撮影されたとホーガンは彼も訴えていた)からホーガンの人種差別発言が露呈、WWEから契約を切られ殿堂からも名前を消された。ホーガンは名誉を失った。

しかし、訴訟には勝った。裁判所はゴーカーに賠償金1億ドルをホーガンに払うことを命じた。
1億ドルは約100億、独立系メディアに払える金額ではないからゴーカーは破産することに。
実はこの訴訟、狙いはこれでホーガンすら駒の1つに過ぎなかった。ピーター・ティールという実業家がホーガンに資金提供していた。ピーターも以前に数回ゴーカーに記事にされていて、その恨みからこの訴訟に資金提供した。
これが怖いのは大金持ちが気に入らないと思ったメディアを自身が表に出ることもなく圧力をかけることができるということを示してしまったこと。
このホーガンの件自体はゴーカーが悪いと思う。ホーガンのセックスに公益性はないと思うし。でも、大金持ちの私怨で潰されていいわけじゃない。
ゴーカーはゲスいイエロージャーナリズム体質だが、それが故に他では書けない政治家や財界人の不正を暴く記事も多く出している。問題はあるかも知れないがメディアの義務である権力の監視の役割を果てしてる。
しかし、今回のような訴訟を権力者や金持ちが起こし続けるとメディアは彼等に都合の悪いことを報じることができなくなる。
セレブタレントとゴシップメディアのよくあるパターンの訴訟と思われたこの件はアメリカの報道の独立性が脅かされてることを示した大きな意味を持つものだった!
ピーター・ティールは熱烈なトランプ支持者で「差別は問題視するから問題になってるだけ」と言い放つ差別放置主義、女性の選挙権獲得で世界が停滞したと考える性差別主義者でもある。メディアを潰したがる人間なのがよく分かるよな笑

他にも地元紙の批判的な論調を止めさせようとして、新聞社を買収したラスベガスの実業家の話もあり、大資本が民主主義を脅かす存在になっていて、それを食い止める術がない現実があるんだということが示される。

要するにこれも新自由主義経済の弊害だよね。
金を稼げる人間がとにかく偉く、そういう連中ばかり優遇した結果、富裕層が何をやっても許される世界になってしまった。
日本も同じだよな。姑息で下劣な拝金主義者が「俺のようにやれ」と得意気に息巻いてる。うんざりするぜ🤮

L.Aのクラッシュと呼ばれたThe dilsのI hate richが聴きたくなった。

https://youtu.be/jR2YKwSjnSw
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