リミナ

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のリミナのレビュー・感想・評価

3.8
韓国で実際に起きた光州事件をベースにしたとあるタクシードライバーの物語。

当時言論統制が行われていた事件が実話として語られている以上、本作の結末はある程度読めてしまう。だが実話であるが故に生々しい光景が現実として起きたことなんだという衝撃で引き込まれる。また、主人公や外国人記者が光州の実状を知らない(知り様がない)外部の人間だからこそ、観客も同じように初めて現地で目にした感覚を味わえる。

序盤の日常描写は、多少口が悪いが人柄は良い主人公の様子を何気なく描くと共に、後の光州での悲惨な実状との対比となっている。
光州に訪れた当初はどこか明るいムードもあるのだが、背景の建物に記されたメッセージ等で不穏さを伝えていく。
現地住民との交流描写もあることで、より民衆側へ感情移入できる。どうかこの人は生き残って欲しいと思ってしまうのだが...。

映像的には、市街地での軍との衝突において、煙幕や夜の暗がりを多少視認性は悪くとも映すことで緊迫感が生まれていた。
物語のキーアイテムであるカメラを通して撮影している映像は処理を変えているのも印象的。

実話とはいえ映画向けに多少誇張・変更されている要素はあると思われるが、ただ事件の悲惨さを伝えるのではなく、人の成長や繋がりも描かれている良い作品だった。
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