EDDIE

スリー・ビルボードのEDDIEのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0
母の愛と贖罪…娘は誰に殺されたのか?
三つの広告看板、三人の中心人物。
相手の都合を無視した自分中心の物言いで、人は周りが見えなくなる。
赦し誰かのために動くことで何かが前進するかもしれない。
洗練された脚本が何度鑑賞しても飽きさせない傑作ミステリーヒューマンドラマ。

私の2018年ベストムービーです。
Filmarks始める前だったので初レビュー。
劇場鑑賞で1回目、配信のポイント鑑賞で2回目、購入したBlu-ray鑑賞で3回目、そして今回Blu-rayで再びの4回目鑑賞です。

夢中になって観ているとあっという間に1時間、2時間が経過してしまう映画。
本当に脚本が素晴らしく無駄がない分、物語に入り込んでしまって気づいたらもう中盤?あれ?もうクライマックスだ!となってしまいます。

物語としては主人公の女性ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、娘アンジェラ(キャスリン・ニュートン)をレイプで殺害されるのですが、警察の捜査の甲斐もなく犯人が捕まらないというやや重苦しいもの。
タイトルの『スリービルボード』とは3つの広告看板を指し、長年使われてない往来も少ない道路脇の広告看板にミルドレッドが広告を掲載するところからきています。

原題は“Three Billboards Outside Ebbing, Missouri”で、ミズーリ州のエビングという小さな田舎町の話。

重苦しいテーマながら、時折ユーモア溢れるセリフがあるなど、クスッと笑ってしまう場面もあります。
ミルドレッドにくわえ、レイシストの暴力警官ディクソン(サム・ロックウェル)と警察署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)の三人を中心に物語が進行します。

それぞれに考えや思想があり、特にミルドレッドとディクソンは周りの主張なんかお構いなしに猪突猛進に行動します。
街の住人からの尊敬も集めるウィロビー署長はディクソンからも慕われているほどの出来た男ですが、広告看板はまさに彼を標的にしており、名誉毀損に捉えられています。

街の住人からの注目も集めるなかで、ミルドレッドは窮地に立たされ、ディクソンは暴力警官が故みんなに疎まれ、ウィロビーは病を患うという三者三様に事情を抱えているわけです。

アクションのような派手なシーンは少ないものの、見所となるシーンが随所に挟まれるので、115分の鑑賞時間はあっという間。

私がこの物語に心を奪われたのは、ミステリーの趣を持ちながらも、善悪関係なく、三人の目的や方向性が一致するところ。
敵対関係から協力関係になる過程が無理なく描かれた丁寧なヒューマンドラマになっています。

だから最初ディクソンは大嫌いなキャラなんですが、最終的に彼の夢や行動変容を見せられ大好きになります。
ミルドレッドは最初から目的は娘殺害の復讐と犯人の逮捕と一貫していながら、警官に対する見方が変わっていきます。
ウィロビーは彼の尊大な心の機微や秘めたる想いが明かされるにつれて、周囲の尊敬心が理解できてきます。

そんな流れからのディクソンのバーからの一連の行動やラストシーンには感動必至なわけで、とにかく何度観てももの凄く鑑賞後の余韻に浸りながらエンドロールを眺めることができます。

間違いなく傑作。

キャストは主要三人のほか、ミルドレッドの息子ロビー役でルーカス・ヘッジズ。シリアルまみれのシーンは父親のセリフも相まって笑ってしまいます。
そんなミルドレッドの別れた元旦那チャーリー役はジョン・ホークスで、彼の19歳の恋人ペネロープを最近話題のサマラ・ウィーヴィング。『ガンズアキンボ』のパンキッシュなメイクとは違い、大きな瞳が特徴的な本当美人さんです。
前述の通り、殺された娘アンジェラ役はキャスリン・ニュートン。

ミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドは本作でアカデミー賞主演女優賞、ディクソン役のサム・ロックウェルは同賞助演男優賞を受賞しています。
ウディ・ハレルソンも含めた三人の会話劇はもはや芸術の域。

山々に囲まれたエビングのロケーション撮影もとても目を奪われる光景で、もう褒めるところばかり出てきます。
セリフ一つ一つのセンスやユーモアも含めて、全部引っくるめて大好きな作品です。

※2021年自宅鑑賞49本目
※2018年劇場鑑賞
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