あんへる

さよならの朝に約束の花をかざろうのあんへるのレビュー・感想・評価

4.7
公開5周年リバイバル上映劇場鑑賞後の再投稿


色褪せないどころか、より熟成した感動に全身を包まれる圧巻の映像体験。
やはり傑作。改めてアニメーションとは総合芸術なんだなと再認識させてくれる、そんな作品だった。

生粋のハイファンタジーに岡田麿里の作家性を馴染ませ、外枠を丁寧に丁寧に形作る。
造りとしてはシンプルながら、マキアとエリアルの人生の変遷と行間を叙情的に描いていく過程で映し出される映像美や劇伴、演者の芝居やSEの拘り、一本のアニメ映画の短尺の中でここまで表現しきれる凄さに言葉を失ってしまう。
特に美術監督を務めた東地和生氏が手掛ける随所にライティング表現の光る背景美術は何度見ても息を呑む程に美しい。
この手のアプローチのPA作品は気が狂いそうなくらい好みだったんすよ。

別れを紡ぐ存在が親として子に愛を伝え、それが絆となって、また生を紡いでいく。
人として尊ぶべき所をテーマとして真っ向から突いてくる、ある種の「いやらしさ」みたいな部分は人によっては感じるんだろうが、そこを掛け値なしに最後の着地まで描き切る往年のマリーの作風が味わいとなって美麗な映像とのシナジー効果をいい感じに得ている感覚。勿論演出としても映えている。
そしてしっとりと名曲ウィアートルで締め括られる映画としてのパッケージングの美しさが堪らない。

思えばあれから5年、石見舞菜香にはもっといい作品に恵まれてほしいと毎クール勝手に思い続けている人生です。本当にありがとうございました。←
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