せーじ

JUNK HEADのせーじのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
4.1
315本目。
これも公開当時話題だった作品。ポスタービジュアルを観る限りスチームパンクなSF作品なのかな?と思い、ほとんど何も情報を入れずに鑑賞。




…はぁ…(放心)だいたいあってたけどさ…
こんな作品だったとは思わなかったです。
なんだよこれ、終わるまで見届けないといけないやつじゃないかよ…とも思ったり。
とりあえず、ネタバレをしないようにつらつらと書いていきます。

■序盤から観客を振り回す作劇と世界観
オープニングから中盤までは観ていて「なんだなんだなんなんだ、わけわかんねぇぞ?」と、ドン引きしながら観ていました。感覚としては『マッドマックス 怒りのデスロード』の冒頭を観ているような感じに近かったです。いきなり、主人公諸共作り手が編み出した世界の中に観ているこちらを無理矢理ブッ込もうとしてくるので、観ていく上での寄る辺なさが半端ないことになります。しかも、主人公は秒速で詰みそうになりますからね。その後も中盤までずっとピンチが続くのに、やることなすこと全く上手くいかなくて、じりじりしながら観なければならなくなってしまいますし。そういう意味では「興味の持続」が、緊張感を保ちながら途中までは高い位置でキープされ続けていく作品なのではないかなと思いました。
それと、何より特筆しなければならないのは「キャラクター造形」の怖さと気持ち悪さでしょう(褒めてます)。世界観の雰囲気としては『ニーア:オートマタ』のような「乾いた遠未来感」とでも言いましょうか。打ちっ放しのコンクリートの煤けた感じだとか、廃工場や廃炉跡などの鉄錆が良く似合う、あの感じですよね。そこに、肌色の異形の怪物がいろんなサイズと形状でわんさか出てくるうえ、流血なども含んだゴアな表現とかがそこかしこにある感じなので、ずっと顔をしかめながら観ていました。グロさとしてはかなりレベルが高いと思います。いずれにしろ、画としてのインパクトの強さと怖さと気持ち悪さを保ちながら、観客が主人公共々振り回される構造を持つ作品であるので、かなり刺激的でスリリングな作品なのではないかな、と感じました。途中までは。

ただですね…

■ダレてしまった中盤の展開と演出
その独特な世界観にある程度慣れてしまう中盤は、観ていて結構ダレてしまいました。そこでは文字通りの「おつかいイベント」が展開されるのですけど、あまりそれがストーリー上効果的な展開になりきれていなかったのですよね。主人公が為すべき目的が止まった状態で話が進んでしまううえ、その先の展開もすぐに読めてしまう騙されがあるだけなので、再生を止めてしまおうかなと思うくらい退屈でした。もっとも帰り道に主人公が本作の実質的なヒロインにあたる女の子(?)キャラと出会うくだりもあるのですけど、それもなんだかそこまで印象的ではないし、最後まで観ても特にその時出逢った「彼女」が何かを為す訳ではないので、物語として非常に勿体なかったです。せめてさらわれたところを助けに行く展開にするとか、もう少し何かやりようがあったのではないのかなと思います。
加えて、主人公が再び目的に向かって進み始めるのはかなり後ろのほうにならないと始まらないので、そこでの「おつかいイベント」自体そのものが、そもそも盛大な「寄り道」になっちゃっているのですよね。冒頭はあんなにスピード感のあるテンポでかき回していたのに、完全に停滞してしまっていて、本当に再生を止めてしまいたくなってしまいました。…まぁそれは、作り手が観客を落ち着かせようとしたかったのだとも言えるのかもしれませんが。
あと、オープニングの字幕は要らないと思いました。スクロールされていく文字がYouTubeの動画とかで見るようなフォントでとてもダサかったですし、そういうのは、そもそも画面を観ながら観客に読み取らせるべきことなのですよね。同じストップモーションアニメの『PUI PUI モルカー』は、画だけで状況の説明をしていくということを徹底しているのに、本作は字幕も状況説明も悪い意味で懇切丁寧過ぎるのです。もう少しそちらの方向に演出を振ってしまってもよかったのではないかなと思います。
この作品は三部作構成だそうなのですけど、残念なことにストーリーそのものが本当に途中で終わってしまいます。鑑賞後はおかげさまで続きが気になり過ぎて「次いつ公開なの?こんなに時間がかかるなら終わるまで死ねないじゃん」ってなるのですけど(どうやら次作は2024年完成目標らしいですが)もう少し区切りの良い所で〆てもよかったのではないかなとも思います。どうしてくれるんだ!ってなってしまいましたね(いい意味も含まれています)。

※※

とはいえ、終盤のバトルは手に汗握ってしまいましたし、そもそもの話、これだけの内容のものを七年もの間時間を費やして作り上げたというのは、それだけでも驚異的なことだとは思います。色々文句を書いてしまっていますが、基本的には好意をもっているつもりですし、生きて完結を見届けないとな…と思うくらいには魅力的な作品だったと思います。
グロさが気にならない方はぜひ。
せーじ

せーじ