影絵アニメーションの祖ロッテ・ライニガーによる“眠れる森の美女”。
バレエでお馴染みの“眠れる”ですが、影絵によるコマ撮りってバレエと共通点がありますね。片やセリフがなくパ(踊りのステップのこと)とマイムで物語を表現するバレエ、片や朗読あるいは挿入字幕はあるものの、表情はなく、マイムが登場人物を生かす影絵アニメーション。バレエを知らない方には伝わりづらいでしょうけれど、ロッテ・ライニガーの影絵フィルムでバレエ作品にもなっている童話を見ると、マイムというものについて特に考えさせられました。
レベランス(挨拶の仕草のこと)ひとつで身分や気品を表現しうるか、手のひらの向きと位置だけで嘆きと喜びを表現しうるか、パフォーミング・アーツにおけるマイムの真髄を感じさせます。

さて本編。バレエファンは定期的に“眠れる”
の世界観に触れているものなので、どうしても演出の比較をしてしまいがち…そんな視点で見た時の気になる点を以下。
・オーロラ姫の誕生を祝福する妖精(仙女)達の空飛ぶモーションに激萌え。ストップモーションのぎこちなさはあるものの、普段見ているポワントワークで表現される妖精らしさとは違って、そのまんま空中をふわりと浮く直球の表現！加えてエアリー感のある妖精達の被服のシルエット！なるほどなー
・カラボス(オーロラ姫に呪いをかける妖精)の“醜さ”の表象がまさかの“魔女鼻”！これは影絵ならではだな…魔女感がすごい…(バレエだと色んなカラボスがいます。脚が悪い老婆という設定だと踊らずマイムのみだったり、美女設定の場合は技巧たっぷりの攻撃的な踊りがカッコ良かったり。1幕で演出の違いが一番出るのはカラボスかも。)
・カラボス始め妖精たちの登場も良かった。バレエだと彼女らは宮廷で初登場だけど、各々招待状を受け取るシーンがちゃんとあるといいなぁ。また手紙の届け方もロマンチックなんですよね。花のポストとは。
・国民がいる。バレエでは省略される市井の人々のマイムが面白い。糸紡ぎを回収され、姫の悲劇を嘆き、呪いによって眠り、また目覚める、それぞれのマイムが分かりやすく表現されていて流石だ。
・そしてライニガーらしいと思うのは、城をイバラが覆うシーン。ストップモーションでまぁ細かいこと…これで100年の経過をうまく表していますね。また王子がイバラをなぎ倒すシーンは、まるで王子を迎え入れるようにイバラが開いてロマンチックな雰囲気。イバラが自ずと消えていくということはグリム版に依拠してるんですね。
・オーロラ姫がベッドに寝ていない…糸紡ぎの刺さった高い塔にいるまま…！そらそうだな…バレエでは、クラシカルな演出だと大抵王様と王妃さまが嘆きながらベッドかカウチソファにオーロラ姫を寝かせるシーンがあるので、なんか新鮮でした…
・ライニガーの影絵アニメーションでは背景が注目点なんですけども、小作品ではまさに舞台演劇のような固定された背景なので、余計にバレエの演出と比べちゃう。奥行きの作り方がスクリーン重ねた舞台と似てて良い。

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ライニガー、実はあまりハマらない