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血染の代紋のRenkonのレビュー・感想・評価

血染の代紋(1970年製作の映画)
4.0
ヤクザ映画で"社会派"を描くなら、深作欣二の右に出る者はいないのではないだろうか。
昭和40年の横浜を舞台に、コンビナート建設の利権を巡った組同士・建設地にあたるスラムの住人たちによる、三つ巴の抗争を描いた作品。

浜安組の新組長に襲名し、コンビナート建設に向けたスラムの地上げを命ぜられる郡司(菅原文太)。
だが、自らもスラム出身が故に、故郷への郷愁と、組への忠誠の狭間で彼は葛藤する。
そんな彼の前に立ちはだかるスラムの住人たち。その中には郡司の旧友速水(梅宮辰夫)の姿があった。速水もまた、浜安組と同じく利権を狙う大門組と繋がりがあり、2人はかつて遊んだ故郷を舞台に、対立する立場に立ってしまう。

浜安組の裏で暗躍する大門組。
郡司らとは違い、横暴な地上げで利権をせしめようとする。
結果大門組の策略と(相変わらずの)内田朝雄の裏切りによって浜安組は瓦解し、スラムの地上げが取り行われる。
重機によって、無情にもスラムがなぎ倒されていくシーンは迫力的かつ、古き時代が資本社会という新たな波に飲み込まれるという暗喩にも感じた。(東映のスラムのセットは毎度クオリティが高い)

この映画の最後には、
「現在この辺りを支配するのはもはやヤクザではない 
巨大な資本力が吐き出す黒煙と轟音である。」
という印象的なナレーションが、コンビナートの映像をバックに挿入される。

京浜工業地帯で工場萌えをしている 人には、黒煙と轟音の下に眠る、古き歴史が描かれた今作の鑑賞を是非お勧めしたい。
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