アフリカ戦線にてドイツに敗北して生き残ったイギリス人兵士が、ナチスから逃れるためにホテルのウェイターになりすますという緊張感溢れる内容を、様々なアクシデントやドラマを積み重ねて最後までドキドキハラハラさせていく語り口は80年たった今でも古びておらずさすがワイルダー監督と唸ってしまった。そんな退っ引きならない状況でもイギリス人兵士をサポートするホテルの支配人や歌が大好きなイタリア人将校などユーモアのあるキャラクターを随所に登場させてリラックスさせる手腕も◎。
でも後半ヒロインのピンチに対しての主人公の対応があまりも酷すぎてちょっと醒める、ラストも主人公があんなことしたらそういう結末になるしかないけれど凄いビターで気持ちが暗くなる。そう思うと『第十七捕虜収容所』はこの作品での反省を踏まえるかのように工夫を凝らしたんだな。
シュトロハイムが十八番であるドイツの軍人役を嬉々として演じているのも見所、容赦ない鞭の使い方がドイツ軍の憎々しさを煽る。