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白い鳩のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

白い鳩(1960年製作の映画)
5.0
【フランチシェク・ヴラーチル、プラハに流れ着いた鳩は...】
2022/7/2(土)より公開される『マルケータ・ラザロヴァー』。圧倒的な画作りのフランチシェク・ヴラーチル監督作が日本公開されることは嬉しいことである。それを記念して、『白い鳩』を観てみた。これが『マルケータ・ラザロヴァー』以上に衝撃的な作品であった。

冒頭から観たこともないような構図が観客に押し寄せる。小高い山、から無数の鳩が放たれる。CGのようなモザイクを形成しながら鳩が飛び出す場面は圧巻である。一羽だけ、籠の中で怯えており、なんとか空に放つ。しかし、出発が遅れたせいで嵐に巻き込まれ、プラハに流れ着くのだ。マンションの一角で羽を伸ばし休憩しようとするも、ガラスが割れ、出血、小さな空間に落下していく。それを目撃した親父が窓から手を伸ばす。独特な見下ろしの構図で、羽に手を伸ばす親父が映されるのだが、これがカッコいい。本作はこのような画が所狭しと並べられる。

影と光で縦長の画を生み出し、そこに車椅子を進行させたり、鳩の帰りを待つパートでは、鳩の置物を盗む場面が描写されるのだが、これが現実離れした、不思議な空間となっている。猫と鳩が戦う場面ですら、エレベーターが猫ごと上昇するアクションを魅せて来る

鳩の帰りを待つ者、傷ついた鳩を傷ついた少年が癒すパートを往復しながら、痛みと癒しの物語を刻み込んでいく。それを、圧倒的な画で殴りつけてくる。これは、観る人によっては人生に影響を与えるほどに凄い映画だ。どこかの大学で、オススメ映画リストに『白い鳩』を挙げていたが、それは確かであった。言語化し難い、興奮と体験がこの映画に詰まっていたのだ。
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