レインウォッチャー

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel I. presage flowerのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
Fate / stay night シリーズの完結編となる桜ルート、第一章。

もはや親の声より聞き馴染んだ「やっちゃえ!バーサーカー!」を有難くいただくも、ルートは過去作からみるみる大きく外れてゆく。エヴァ破もびっくりな急展開で、誰も彼もバッサバッサ処理されてしまうのであった。

シリーズの看板である目まぐるしいアクションは間違いなく見どころだけれど、今作は第一章ということで、士郎と桜の関係性構築に何より時間と労力が割かれる。
2クールのTVアニメだったセイバールート(無印)や凛ルート(UBW)に比べれば、劇場版三部作とはいえ単純な尺勘定では半分しかないわけだから、当然といえば当然なのだろう。

今作ではまだ桜は常に「お留守番」状態で、士郎たちが身を投じる本筋やバトルは彼女が(一見)不在な状態で進まざるを得ないのだけれど、合間に帰宅する場面を挟んだり、彼女を象徴する一面ともいうべき「雨」を使ったりして常に桜の存在が背後にいることを忘れさせない。
帰りを待つ桜の反応、距離感が1ステージごとに変化していって、それがストーリー自体の進展に同期している。士郎が淫夢を見てしまうのも納得である。

そして最後にそれを受け止めるのはAimerの『花の唄』だ。
heaven's feel三作の主題歌はどれも作詞曲:梶浦由記&歌:Aimerコンビが手がけており、この総合的解像度が三作をがっちりシメていると思う。

脳裏で白く揺らめく炎のようなAimerの歌は本編以上に「桜そのもの」を形作る。
「貴方のこと傷つけるもの全て / 私はきっと許すことはできない」
「私を傷つけるものを貴方は許さないでいてくれた / それだけでいいの」

…激重案件じゃあないっすか…

桜とはもちろん花の名前でもあって、咲き誇る以上に散り際が愛でられる性格は、常に死を意識させるものともいえる。桜の樹の下には死体が…なんて定番の文句もあるくらいだし。

セイバーでなくとも「逃げるのです、士郎!」と叫びたいところだけれど、仕方ないね。かわいいからね。