ポルりん

海水浴のポルりんのレビュー・感想・評価

海水浴(1895年製作の映画)
3.0
本作は海水浴場にて、複数の子供とデブ女が海に飛び込み、そこから浜まで浅瀬を歩いて戻ってくるのを繰り返す。
つまり本作は、ホームムービー的ともいえる日常的な感覚で、子供とデブ女を捉えただけの作品である。

初めて本作を鑑賞した時は、

「何でこのデブ女は複数の子供がいる中で、生尻を露出しながら駆けずりまわっているのだろうか??
もしかして、露出狂なのか??
だとしたら本作は、世界で初めて女性の生尻を捉えただけではなく、露出狂を捉えた作品と言える歴史的価値の高い作品と言えるのではないだろうか」

などと考えていた。

※後に生尻っぽく見せる水着だと判明。

しかし、何度も生尻水着を拝んでいる内に、何故か絶対的な寂しさのような不思議な感覚に襲われてしまった。
それも、観れば観るほどにその感覚は強くなってくる。

子供たちとデブ女が遊び戯れている親密な風景であるはずなのに、冷え冷えとした非人間的な光景・・・そう全ての人間が消え去ってしまった後の、無人世界の荒涼とした光景のように見えてしまう。
私がこの光景を肉眼で見たのであれば、間違いなく人間的な親密さを感じていたはずである。

・構図
・子供たちとデブ女の動き
・絶え間なく波うつ海が水平線の彼方まで広がっていく光景

色々と考えてみたのだが、上記のような演出的な問題ではないだろう。

恐らくだが、当時の撮影技術が大きな要因を占めていると思う。
当時のカメラでは、普通に撮影しても技術的な問題で、どうしても非人称的要素が強く出てしまう。
こういった非人間的視線に己の肉眼が同調してしまったから、この光景に人間不在の寂しさや不気味さを感じるのではないだろうか・・・。
一応、他のリュミエール映画をそれを意識して鑑賞したのだが、どれも上と同様の事を感じてしまった。

技術的に未熟だからこそ感じる事が出来る、実に味わい深い作品である。
ポルりん

ポルりん